コシヒカリとたい肥利用
 茨城県の水稲の栽培面積は77,400haにおよび,水稲は県内で最も栽培面積が広い作物です。しかし,主力品種であるコシヒカリでは,過剰施肥が倒伏を助長し,食味の低下につながることなどから,たい肥利用に慎重な農家が多いのも実情です。
 しかし,基盤整備等によって水田土壌の乾田化がすすみ地力が低下したことや,特別栽培米などの取り組み・肥料価格高騰などから,水稲栽培での家畜ふんたい肥の施用が期待されています。

牛ふん堆肥連用時の水稲施肥診断法
 県農業総合センター農業研究所が「水田における牛ふん堆肥連用時の水稲施肥診断法」を確立し,それをもとに県畜産センターが施肥設計計算のシステム化および県内農家のたい肥情報の集約に取り組みました。「たい肥ナビ!水稲版」を開発したので紹介します(図1)。

図1 牛ふんたい肥を使った水稲栽培の施肥法(概要図)

 水稲版は,牛ふんたい肥の連用効果と土壌診断に基づく地力窒素を考慮していることが大きな特徴で,全国に先駆けた画期的なシステムです。これにより,化学肥料を適切に削減できます。
「たい肥ナビ!水稲版」でのたい肥施用の考え方
 施肥法(「基肥+穂肥型」またはコシヒカリ専用肥料を使った「全量基肥型」)を選択し,さらに下記の項目について必要事項を選択・入力すると,施肥設計結果が表示されます。
@ 牛ふんたい肥の選択
 たい肥生産情報のなかから使用する牛ふんたい肥を選択します。
A 牛ふんたい肥の施用量
 牛ふんたい肥の施用量は,乾田では1t/10a,湿田では0.5t/10aを基準値としています。
 農業研究所が「牛ふんたい肥施用基準マップ」を作成しており,各農林事務所(経営・普及部門または農業改良普及センター)へ問い合わせると,県内の個別の水田ごとの施用基準量が確認できます。
B 土壌診断により基肥窒素量の決定
 水田土壌の可給態窒素(地力窒素)を測定することで,適切な基肥窒素量が判断できます。土壌診断は,各農林事務所(経営・普及部門または農業改良普及センター)で実施しています。
C 牛ふんたい肥の連用効果
 牛ふんたい肥に含まれる窒素は,単作で作物に利用されるわけではありません。前年に施用したたい肥の残効は翌年以降に効きます。過去のたい肥の施用量等を入力し,たい肥の連用効果を考慮した施肥設計ができます。
 なお,豚ぷんたい肥および鶏ふんたい肥の水稲への施肥法については,現在,農業研究所が栽培試験を行っており,今後拡充していく予定です。

「たい肥ナビ!水稲版」の入手方法
 既に公表している水田を除く露地栽培向け「たい肥ナビ!」と同様に,畜産センターホームページで公開しています。どなたでも無償でダウンロードできます。
 県内畜産農家の方々のご理解および各地域農業改良普及センター・茨城県たい肥利用促進協議会等の関係機関のご協力により,たい肥生産情報の掲載農家戸数は171件になりました。水稲版には,そのうち牛ふんたい肥の83件の情報が掲載されています(H21.3.31末現在)。施肥設計結果を,ご自分のたい肥の販売促進にお役立て下さい。

茨城県畜産センターHP
「たい肥ナビ!」
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/chikuse/taihinavi.html
「たい肥ナビ!水稲版」
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/nourin/chikuse/suitou_taihinavi.html