一般に養豚農家で生産する肉豚は、三元交配豚(LWD又はWLD)を肥育しているため、優良な肉豚を生産するには三元を構成する各品種の種豚改良が重要であり、とくに肉豚の遺伝能力の半分を占めるデュロック種の良否は、養豚農家の生産性を大きく左右します。そのため、茨城県の雌豚(LW又はWL)に適したデュロック種の種豚を育種改良することの必要性が増してきました。
 種豚の改良はこれまで、外貌や増体重などから遺伝能力を推定して選抜を実施してきましたが、近年、遺伝子情報(QTL情報)を活用して効率的に選抜することが可能となってきました。
 そこで、当所では今年度から3年間、デュロック種を用いて遺伝子情報を活用した改良技術開発を行うことにしました。


<静岡県から導入したデュロック種(フジロック)>

【これまでの経過】
(1)デュロック種豚の導入
 現在、昨年度までに導入した種豚及びこれらから生産した育成豚23頭を飼養し、本年度は静岡県(フジロック)、宮城県(しもふりレッド)及び山形県の指定種豚場から雄6頭、雌9頭を導入しました。(写真)
(2)検査した遺伝子
1) TUBBY遺伝子は筋肉脂肪に関与しています。遺伝子型はA/A、A/G、G/Gがあり、A/A>A/G>G/Gの順に筋肉内脂肪が多くなります。
2) FSHR遺伝子は、雌の排卵数に関与しています。遺伝子型はG/G、C/G、C/Cがあり、G/G>C/G>C/Cの順に排卵数が多くなります。
3) Mx1遺伝子は※RNAウィルス抑制能に関与しています。
 遺伝子型はA/A、A/C、C/Cがあり、A/A型は正常型、A/C型は3塩基欠損型ですが、A/A型とA/C型はともにRNAウィルス抑制能があります。C/C型は11塩基欠損型でRNAウィルス抑制能を失っています。
※RNAウィルスには、インフルエンザウィルスやPRRSウィルスなどが含まれます。
(3)検査結果
1)TUBBY遺伝子
全ての遺伝子型の豚がまんべんなくいることが分かりました。次世代以降、筋肉内脂肪の多いA/A型の選抜を進めていきます。
2)FSHR遺伝子
全ての豚は排卵数が多くないC/C型であり、(独)家畜改良センターの結果でもデュロック種はすべてがC/C型であることから、デュロック種については、この遺伝子によって産子数の改良を実施することは困難であることがわかりました。
3)Mx1遺伝子
A/C型は4頭のみで他の豚はA/A型であり、C/C型はいなかったことから、ウィルス抑制能を持った豚群をつくることが可能であることがわかりました。

表 遺伝子検査の結果
【今後の予定】
(1)デュロック種の選抜
 デュロック種のTUBBY遺伝子などの検査を行うとともに産肉能力検定や筋肉内脂肪量を調査して選抜を行っていきます。
(2)三元交配豚での実証
 選抜されたデュロック種の雄を交配して生まれた三元交配豚の持っているTUBBY遺伝子型と生産された豚肉の筋肉内脂肪量などを調査してこれらの関係を調べます。
 将来的には、優良な遺伝子をホモで持つデュロック種の豚群を造成し、県内の養豚農家に利用してもらうことにより、ローズポークをはじめとする県内肉豚の品質向上につながることを目指しています。