畜産課長として、2年目を迎えることとなり、また新たな気持ちで畜産振興に取り組んでまいりますので、よろしくお願いいたします。
近年、国際化の進展に加え、トウモロコシ主産地である米国のバイオエタノール需要の増加による配合飼料価格の高騰、高病原性鳥インフルエンザの発生、食肉偽装事件の発生等、畜産業を取り巻く環境はいっそう厳しいものとなっております。
このような状況のなか、農林水産省では、平成17年3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」を農政の新たな方向付けとして、WTO農業交渉等への戦略的取り組み、担い手への施策の集中化重点化による国内農業の体質強化、資源・環境対策の推進などを柱とする「21世紀新農政2007」を推進することにより、我が国農業を21世紀にふさわしい戦略産業とし、国民が求めるおいしく安全な食料の安定供給の実現をめざしております。
一方、本県では、平成18年3月に策定した「新茨城県総合計画」及び「茨城県農業・農村振興計画」において、全国をリードする力強い茨城農業を創出することを計画の基本方針としております。畜産においては、常陸牛に代表される茨城の顔となる畜産物のブランド化や生産情報の公開、高病原性鳥インフルエンザ防疫体制の強化などによる安全・安心な畜産物の生産や家畜排せつ物処理施設整備の推進が計画の主な内容となっております。さらに、昨年度からは、「茨城農業改革」の進展期となる後期4年間が始まっており、畜産における主な施策として、肉質や美味しさ等のデータ分析に基づく、より商品価値の高い常陸牛の生産技術の確立などに取り組んでいるところです。
現在、畜産が直面している大きな課題は、配合飼料価格の高騰であることから、食品残さの飼料化(=エコフィード)や自給飼料の増産を推進し、国産飼料の生産・利用の拡大を進めていく必要があります。さらに、今後も畜産が消費者の理解を得ながら発展していくために、家畜排せつ物の循環利用の推進と環境への負荷削減対策を併せて進め、「環境にやさしい資源循環型の畜産」を目指す必要があります。
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そこで、平成20年度の重点施策のうち、生産基盤の増強として、茨城西部地区を対象として、「草地畜産基盤整備事業」の計画策定を行ってまいります。また、「耕種作物等自給飼料確保緊急対策事業」により、自給飼料の増産に必要な収穫・調整機械の導入を支援するなど稲発酵粗飼料の生産を拡大し、飼料の生産基盤の拡大を図るとともに、「放牧等による遊休農地再活用促進事業」により、和牛の放牧実証展示を行い、耕作放棄地を活用した放牧技術の普及に努めて参ります。さらに、県西地域における常陸牛の繁殖基盤を拡大するため、「県西地域常陸牛繁殖基盤拡大推進事業」を実施してまいります。
畜産物流通の促進及び畜産経営の体質強化として、「常陸牛ブランド確立推進事業」により、引き続き常陸牛の販路拡大や差別化の推進並びに酪農家における受精卵移植による常陸牛の増頭対策など常陸牛の産地強化に取り組んでまいります。また、「系統豚普及・銘柄豚生産体制強化事業」により、系統豚の能力向上と安定供給体制を構築することで、ローズポークの品質向上と生産拡大を図ってまいります。
家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産として、家畜伝染性疾病の発生やまん延防止、飼養衛生管理基準に基づく衛生指導の徹底を図るとともに、「高病原性鳥インフルエンザ対策事業」により、引き続き、鳥インフルエンザの監視体制の強化と円滑な初動防疫体制の維持に努めてまいります。また、「牛海綿状脳症検査推進事業」により、24か月齢以上の死亡牛全頭検査を継続し、飼料規制等によるBSE発生予防対策の実効性を確認するとともに、早期発見により発生拡大防止が図られるよう監視してまいります。
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試験研究の推進として、黒毛和種のうまみに関連する遺伝子研究や常陸牛のうまみ成分の分析を行うなど、本県銘柄畜産物の一層の高品質化に取り組んでまいります。
これらの主要な施策に加えて、平成20年度は次のとおり「生産基盤の増強」、「畜産物流通の促進及び畜産経営の体質強化」、「家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産」、「畜産環境対策の充実」、「試験研究の推進と指導体制の充実」の5本を柱とする種々の施策を効率的、効果的に執行し、本県畜産の振興を図ってまいりますので、関係者の皆様のご理解ご協力をお願い申し上げます。
1 生産基盤の増強
(1) |
乳用牛については、牛群検定や受精卵移植技術を活用した改良を進め、産乳能力の向上と高品質牛乳の生産を推進する。 |
(2) |
肉用牛については、能力の高い供卵牛を活用した改良と優秀な種雄牛の作出、雌牛群の整備により産肉性に優れた肉用牛の生産を推進する。 |
(3) |
豚については、系統豚や能力の高い種豚の造成を進め、それらを活用した高品質な豚肉の生産体制を整備する |
(4) |
水田を活用した飼料作物の生産や既存農地の整備、耕作放棄地等未利用地の活用、栽培技術の向上により、飼料自給率の向上を図る。 |
(5) |
公共育成牧場に対する経営支援対策の実施と機能強化を図ることにより、公共育成牧場の一層の活用を図る。 |
(6) |
自給飼料生産に立脚した畜産経営の確立を図るため、採草地の造成・整備を実施する。 |
(7) |
遊休農地を活用した和牛繁殖牛などの放牧技術の普及を進め、肉用子牛の生産拡大を図るとともに、アニマルセラピー効果による農村の魅力を発信する。 |
2 畜産物流通の促進及び畜産経営の体質強化
(1) |
常陸牛、ローズポーク、いばらき地鶏等の県銘柄畜産物のブランド力を向上させ、それらを牽引役とした消費拡大対策を進めるため、販路拡大や知名度向上対策を推進するとともに、生産拡大や生産情報の公開、品質の向上や差別化等の取り組みを推進する。 |
(2) |
「系統豚」を活用した銘柄豚「ローズポーク」の生産・販売体制強化を一体的に推進する。 |
(3) |
農業改良資金等の制度資金を活用し、畜産農家の営農意欲の向上と生産性の向上を図る。 |
(4) |
広域農業開発事業参加者に対し、営農指導を実施することにより、経営の健全化を図る。 |
(5) |
養豚農家が経営的に安定した生産に取り組めるよう畜産物価格補償事業を推進する。 |
(6) |
高病原性鳥インフルエンザの発生により影響を受けた養鶏農家が活用する資金に利子補給を行い、経営の再開及び継続を促進する。 |
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3 家畜衛生対策の充実と安全な畜産物の生産
(1) |
サーベイランス検査による摘発淘汰と発生予察によって、家畜伝染性疾病の大規模な発生を未然に防止するとともに,発生時のまん延防止を迅速かつ的確に実施することにより,畜産経営の安定化を図る。 |
(2) |
生産者自らが取り組む家畜伝染性疾病の予防への取り組みを支援し、市町村を単位とする地域の防疫体制を整備する。 |
(3) |
家畜衛生情報の収集、診断予防技術の向上、防疫マップシステムの整備、動物由来感染症の家畜における発生状況の把握を行い,監視・危機管理体制を整備するとともに,慢性疾病対策による生産性向上を図る。 |
(4) |
HACCP方式に基づく衛生管理マニュアルの生産段階への導入、飼養衛生管理基準に係る衛生指導、安全な鶏卵の供給体制の整備、動物用医薬品の適正使用の指導及び飼料製造業者等への立入検査により畜産物の安全性を確保する。 |
(5) |
24ヶ月齢以上の死亡牛のBSE全頭検査を推進し、生産段階におけるBSE監視体制を引き続き強化する。 |
(6) |
消費者に信頼される安全安心な鶏卵・鶏肉を生産するため、高病原性鳥インフルエンザに対する監視体制の強化や防疫体制の充実を図る。 |
4 畜産環境対策の充実
(1) |
「家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律」の管理基準に適合した家畜排せつ物処理施設の整備を推進する。 |
(2) |
「霞ヶ浦水質保全条例」による規制強化に対応するため、負荷削減施設の整備を推進する。 |
(3) |
地域土づくり推進協議会と連携のもと、生産たい肥の成分分析及び腐熟度等の品質診断と生産・利用の指導により、畜産農家における良質たい肥の生産と耕種農家における利用の促進を図る。 |
(4) |
たい肥生産情報の提供、耕種農家との意見交換会などを実施し、たい肥の広域流通を促進する「茨城県たい肥利用促進協議会」への活動を支援する。 |
(5) |
汚水浄化処理施設の巡回指導により畜舎廃水処理の適正化を図る。 |
(6) |
液状コンポストの生産技術の向上と試験ほ場による活用試験を検討し、その適正利用を図る。 |
5 試験研究の推進と指導体制の充実
(1) |
省力的管理、高付加価値畜産物の生産、未利用資源の有効利用など、社会的、経済的な要求に則した家畜飼養管理技術の確立に向けた試験研究を推進する。 |
(2) |
肉用種雄牛の作出のための後代検定、系統豚の造成、受精卵移植等の先端技術の開発と応用を試験研究課題とし、家畜改良の推進を図る。 |
(3) |
家畜ふん尿のリサイクルと家畜ふんたい肥の利用促進を試験研究課題とし、畜産環境保全技術の開発を図る。 |
(4) |
畜産情報の収集・提供や畜産技術指導員等の設置により、畜産団体の組織活動の強化と指導体制の充実を図る。 |
(5) |
畜産経営指導体制を整備し、各種経営指導を実施することにより、畜産経営体の経営・生産技術の高度化を図る。 |
(6) |
畜産センター内に整備した養鶏研究施設において、養鶏業の活性化と安全・安心な鶏卵・鶏肉の生産のための研究を推進する。 |
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平成20年度畜産関係主要事業及び予算額
施 策 名 |
予 算 |
事 項 名 |
予算額(千円) |
備 考 |
生産基盤の増強 |
家畜改良増殖費 |
家畜改良増殖対策事業費補助 |
6,490 |
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県西地域常陸牛繁殖基盤拡大推進事業費 |
549 |
新規 |
家畜改良増殖費 |
新規飼料対策費飼料特別対策指導事業費 |
3,230 |
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耕畜作物等利用自給飼料増産事業費補助 |
16,000 |
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稲発酵粗飼料増産事業費 |
1,345 |
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放牧等による遊休農地再活用推進事業費 |
926 |
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飼料用稲利用促進事業 |
3,960 |
新規 |
国産飼料資源活用推進事業 |
503 |
新規 |
牧野改良費 |
里美共同模範牧場整備強化事業費補助 |
5,496 |
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畜産担い手育成総合整備事業計画策定費 |
8,000 |
新規 |
草地基盤再編整備基本調査事業費 |
300 |
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畜産物流通の促進及び 畜産経営の体質強化 |
畜産振興費 |
大家畜経営活性化資金利子補給金 |
129 |
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大家畜経営改善支援資金利子補給金 |
440 |
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家畜疾病経営大家畜経営維持資金利子補給金 |
1,278 |
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酪農近代化促進費 |
1,623 |
|
酪農ヘルパー組織強化事業費補助 |
5,040 |
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畜産振興資金貸付金 |
畜産振興資金貸付金 |
841,000 |
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畜産物流通対策費 |
肉畜鶏卵生産出荷調整事業費 |
1,535 |
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畜産物価格補償事業費補助 |
12,528 |
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系統豚普及・銘柄豚生産体制強化事業費 |
8,788 |
拡充 |
常陸牛ブランド確立推進事業費 |
20,420 |
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いばらき地鶏普及促進事業費補助 |
265 |
|
牧野改良費 |
広域農業開発事業対策費 |
255 |
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家畜衛生対策の充実と 安全な畜産物の生産 |
家畜衛生対策費 |
家畜衛生対策事業費 |
23,316 |
|
家畜衛生特別対策事業費 |
7,547 |
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獣医療提供体制整備事業費 |
920 |
|
動物用医薬品薬事監視費 |
809 |
|
家畜伝染病予防費 |
家畜伝染病予防事業費 |
45,268 |
|
牛海綿状脳症検査推進事業費 |
50,457 |
|
高病原性鳥インフルエンザ対策事業費 |
16,549 |
|
死亡牛牛海綿状脳症検査補助委託事業費 |
20,368 |
|
自衛防疫強化総合対策事業費 |
30,731 |
|
地域自衛防疫推進事業費補助 |
6,124 |
|
飼料対策費 |
飼料対策推進事業費 |
598 |
|
畜産環境対策の充実 |
畜産環境保全対策費 |
資源循環型畜産確立指導事業費 |
1,578 |
|
地域畜産環境対策事業費補助 |
640,000 |
|
資源リサイクル畜産環境緊急対策事業費 |
10,000 |
|
霞ヶ浦等畜産負荷低減推進事業費 |
641 |
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家畜排せつ物汚水浄水処理特別対策事業費補助 |
30,000 |
新規 |
新規家畜排せつ物処理新技術実証モデル事業費補助 |
20,000 |
新規 |
直接還元解消特別対策事業費補助 |
25,000 |
新規 |
良質たい肥広域流通促進事業費補助 |
2,000 |
新規 |
地域循環型液状コンポスト利用促進事業費 |
888 |
|
試験研究の推進と 指導体制の充実 |
畜産振興費 |
畜産振興推進事業費 |
4,770 |
|
畜産経営指導体制円滑化推進事業費補助 |
31,106 |
|
畜産センター費 |
畜産センター費 |
292,465 |
|
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