はじめに
 現在,酪農経営は乳価の低迷及び生乳の計画生産が実施され,厳しい状況にあります。そのような中,コスト低減を図る一つとして,自給粗飼料を安定的に生産確保することがあげられます。
 このため,平成18年12月12日に鉾田市の酪農家F氏のほ場において,飼料用大麦の飼料用稲収穫専用機を利用した収穫実演会を開催(鹿行地方総合事務所,鉾田普及センター,鉾田市共催)し,夏播大麦の栽培と収穫調整作業の一連の流れについて検討したので紹介します。

飼料用大麦の栽培概要について
 栽培・生育状況は表1のとおりです。使用した品種はP社が新たに育成した飼料用6条大麦の「野毛なし大麦」で,芒がないのが特徴で,嗜好性の向上が期待できます。9月2日に播種し,10月26日に出穂しました。倒伏に強い品種ですが10月上旬の強風雨により挫折倒伏し,収穫時にはそれらが立ち上がった状態でした。大麦の熟期は乳熟期に到達したものも見られましたが,大部分は登熟しませんでした。12月7日に行った坪刈り調査での収量は,生草で10アールあたり2.6t,乾物率21.1%で,乾物収量は10アールあたり560kgでした。
表1 栽培・生育状況

注1)12月7日調査
収穫調整作業について
 実演会当日はあいにくの小雨の降り続く中,ロールベーラ+ラッピングマシーンによる機械体系で作業を行いました。ロールベーラはY社の飼料稲収穫専用機(フレール型)で,ダイレクトカット(刈取・梱包)により調整しました。土砂の混入を防ぐため刈り高を25cmほどとしましたが,作業は大麦が雨に濡れており,機械にトラブルが発生し時間を要しましたが,後日大麦が乾燥してから行った作業では順調に行えました。飼料稲収穫専用機を飼料作物の収穫に応用できることが実証されました。
  収穫調整時に飼料稲収穫専用機に乳酸菌添加装置を装着し,「畜草1号」を添加してサイレージ発酵を促進しました。
サイレージ品質と飼料給与について
 サイレージ品質は表2のとおりで,かなり高水分サイレージになりましたが,pHは4.06と比較的低く,有機酸分析はしてありませんが,良好な臭気が感じられ乳酸菌添加により発酵が促進されたと推測されました。
 高水分サイレージのため開封時に排汁がでましたが,カビの発生はみられませんでした。給与は育成牛に1日10kg程度給与しておりますが嗜好性は良く,使える飼料とのF氏の感想でありました。
 このため,実際の栽培時には大麦の水分含量が低下するまで刈り取りを待つか,またはY社の飼料稲収穫専用機の特徴である,刈り取り後一度排出してウインドローを作り(写真),予乾してから拾い上げてロールベールをつくると,水分含量が低下しサイレージ品質がより改善されると思われます。
表2 大麦サイレージ分析結果(畜産センター)

注)成分は乾物中(%),DCP,TDNは推定値
まとめ
 飼料作物の作付体系で,夏作のトウモロコシの後作として飼料用大麦との組み合わせについて検討した結果,生草収量が2.6t,乾物収量では560kgの収量が得られ,自給粗飼料の増産とほ場の高度利用が期待できました。今回は実演会のためあらかじめ日程を決めて刈取調整作業を行ったため,高水分サイレージになってしまいましたが,大麦の水分含量が低下する時期,または予乾後に乳酸菌を添加して調整すれば,さらにサイレージ品質が改善すると思われました。
 なお,夏播き年内利用で収量を得るためには,播種適期は8月末から9月上旬までになります。
 また,飼料用大麦の収穫に稲専用機械の利用について検討した結果,作業性に問題はなく十分に応用できました。これにより飼料用稲収穫専用機の利用率の向上ができ,良質粗飼料生産の向上につながることが期待できました。