○はじめに
 茨城県では,畜産農家が生産する堆肥の良質化と流通を促進するために,平成16年度から各地域農業改良普及センターを窓口に,堆肥の成分分析を実施してきた結果,県内で生産されている堆肥の成分値が明らかになってきました。しかし、家畜ふん堆肥などは肥料成分の含有率が多様なだけでなく、特に窒素では肥効(肥料的効果)が多様なため、従来の肥効率の目安(窒素の場合:牛ふん30%,豚ぷん50%,鶏ふん70%)では正確な施肥量の調整が難しくなっています。そのため、岐阜県で実施しているRQフレックスを用いた簡易分析手法を用いた窒素肥効推定法に基づき,昨年度,鉾田管内で生産されている堆肥29検体について,無機態窒素(硝酸態窒素,アンモニア態窒素)を分析し,速効性窒素成分を調査したので紹介します。

○分析した堆肥の種類
 分析した堆肥は,豚24点,乳牛5点で,生産方式の約半数が堆肥舎切返し方式でした。
(表1)堆肥分析サンプル 29検体

 豚堆肥の40%が副資材なし,60%が副資材を使用し,また,乳牛は、すべての堆肥で副資材を使用してしました。使用している副資材は、オガクズ,モミガラが大部分を占め,一部でコーヒー粕,木質チップを利用していました。

○分析結果
 豚ふん由来堆肥中の全窒素の平均値は,現物あたり22.7kg/t,そのうち速効性成分(無機態窒素)は5.6kg/tと窒素肥効率は29.7%にとどまっていました(表2)。
(表2)豚ふん由来堆肥窒素成分分析結果

SD:標準偏差,NH4-N:アンモニア態窒素,NO3-N:硝酸態窒素,
無機態N:無機態窒素=NH4-N+NO3-N

また,乳牛ふん由来堆肥に含まれる全窒素の平均値は,現物あたり16.9kg/t,そのうち速効成分は,1.0kg/tと窒素肥効率は12.1%でした(表3)。
(表3)乳牛ふん由来堆肥窒素成分分析結果

SD:標準偏差,NH4-N:アンモニア態窒素,NO3-N:硝酸態窒素
無機態N:無機態窒素=NH4-N+NO3-N

豚ぷん由来及び乳牛由来堆肥ともに従来の肥効率と同等以上のサンプルは6点となっていました。

○結果を踏まえて
 堆肥中には肥料として効きだす成分がバラつきはあるものも含まれています。そのため,堆肥の肥効成分を勘案した施肥量の調整をすれば,化学肥料等のコスト削減につながります。例えば,窒素の基準施用量が25kg/10aの場合,堆肥中成分量が窒素肥効7.5kg/tで施用量2tならば,残りの施肥量は,25kg/10a−7.5kg/t×2t=10kg/10aとなります。
 茨城県畜産センターでは,堆肥と化学肥料の適正な施用量を算出する施肥設計システム「たい肥ナビ!」をホームページ上に掲載しましていますので,是非,ご活用ください。