遺伝的に斉一性に富み、安定した能力を持つ系統豚として、平成6年に認定されたランドレース種系統豚「ローズL−2」は、本県の銘柄豚肉「ローズポーク」をはじめとする高品質豚肉生産に必要なF1母豚生産のため、広く利用されています。
 系統豚の維持豚群は徐々に血縁関係が近親となり、これによる繁殖成績の低下などの弊害が現れるとされ、「ローズL−2」は平成22年頃が更新の時期となります。そのため茨城県畜産センター養豚研究所では、平成15年度から、「ローズL−2」の後継系統豚「ローズL−3(仮称)」の造成を開始しており、平成22年度の完了を目指して、選抜・交配を進めています。
 現在は第2世代(G2)の第2次選抜で選ばれた雄10頭、雌60頭による交配が終了し、4月下旬から第3世代(G3)が生産される予定です。

第2世代(G2)の第2選抜豚


1.改良目標形質及び目標値
 造成完了時どのような能力を持った系統豚群にするかを定めた改良目標は、次のとおりです。
(1)1日平均増体重(DG)は900g(体重30s〜105s、雄雌平均)
(2)背脂肪層の厚さ(BF)は1.6p(体重105s到達時の体長1/2部位)
(3)1腹平均生産子豚数(LS)は11頭
 (1)〜(3)については第2次選抜時(体重105s到達後)、総合育種価を算出し高いものを選抜します。
(4)肢蹄が強健であること。
 体重105s到達時に肢蹄の形態をスコア化し、スコアの悪いものは独立淘汰法で淘汰します。
(5)乳器の並び,形がよく,不良がないこと。
 第1次選抜時(体重30s)に同腹中の優良なものを選抜し、体重105s到達後に不良なものは独立淘汰法で淘汰します。
(6)ふけ肉(PSE)の原因である豚ストレス症候群(PSS)を起こしにくいこと。
 第1次選抜時に遺伝子検査を実施し、豚ストレス症候群を起こしやすい遺伝子を持っている豚を排除します。
(7)抗病性の高い豚群とすること。
 第1次選抜時に遺伝子検査を実施し、豚インフルエンザにかかりにくい遺伝子を持つ豚を選抜し、抗病性のある豚群へと改良を進めます。

2.第2世代(G2)豚の成績
 第1次選抜後の雄42頭、雌95頭の改良目標形質の成績等は以下のとおりです。
(1)1日平均増体重(DG)
 DGは雄雌平均865gで、第1世代の771gより94g増加しました。
 改良目標は900gですので、これより35g増の改良を進めます。(図1)

図1 1日平均増体重(DG)
(2)背脂肪層の厚さ(BF)
 BFは雄雌平均1.5pで、第1世代の1.4pより0.1p厚くなりました。まだ、改良目標の1.6pを下回っていますので厚くなりすぎないよう注意しながら、0.1p厚くします。(図2)

図2 背脂肪層の厚さ(BF)

(3)1腹平均生産子豚数(LS)
 初産のLSは10.1頭で、第1世代の10.2頭とほぼ同数でした。
 これを1頭増の11頭へ改良を進めます。(図3)

図3 1腹平均生産子豚数(LS)

(4)肢蹄の強健性のスコア化(カナダ豚改良センター方式)
 前肢・後肢それぞれの肢蹄について、縦横2方向から見たときの曲がり具合とつなぎの状態を1.0〜5.0にスコア化し、3.0が理想の状態を表すこととしています。
 詳細なデータは割愛しますが、第2世代豚では雄雌平均で前・後肢とも肢間が2.6で、理想の状態よりはやや狭く、つなぎは前肢が3.6、後肢が3.3で、前・後肢ともややつなぎが緩い傾向が見られました。
 歩様の状態も注意しながら理想値に近づけ、肢蹄の強健化を目指します。
(5)乳器の並び・形状及び個数等
 並び・形状に問題あるものは少なく、個数は左右とも平均7個であり、より優良な乳器を持つものを選抜できています。
(6)豚ストレス症候群に関与する遺伝子検査
 平成17年度、第1世代の種豚を検査したところ、雌豚3頭が豚ストレス症候群を起こしやすい遺伝子を持っていることが分かりました。そこで、第2世代ではこの3頭から生まれた選抜候補の子豚の検査を実施し、この遺伝子を持っているものは全て除外しました。
 これにより、ふけ肉が発生しにくい豚群にすることができました。 
(7)豚インフルエンザ抵抗性に関与する遺伝子検査
 本年度、第2世代の候補豚について検査を実施したところ、インフルエンザにかかりやすい遺伝子(欠損型)を持つものが雄で76.4%、雌で70.1%おりました。
 今後も第1次選抜時に遺伝子検査を実施し、第3世代(G3)以降では欠損型を徐々に排除しながら選抜し、最終世代(G6)では完全排除し豚インフルエンザ抵抗性を持つ豚群としていきます。 

3.まとめ
 改良目標の主なものはまだ目標値に達しておらず、目標値到達にはまだ期間を要しますが、1日平均増体重(DG)をはじめとして背脂肪層の厚さ(BF)、1腹平均生産子豚数(LS)は前世代より着実に目標値に近づいておりますので、平成22年度には造成完了の予定です。
 今回の造成では、繁殖・産肉能力の改良に加え、ふけ肉になりにくい豚とすることや抗病性の改良も目標にしており、平成22年度にはローズL−2より能力が高く使いやすい後継系統が完成し、県内の養豚業に貢献できるものと考えております。