茨城県西部の坂東地域では、ソルゴーなどの緑肥やたい肥を使った露地野菜生産が盛んです。
 今回は、そこで使われるたい肥生産の様子について紹介します。

図1.(堆肥舎の写真)
岩井農協たい肥銀行システム
岩井農協園芸部はレタス、ねぎ等露地野菜が主力の部会です。過去には、そのほ場にたい肥を供給するたい肥銀行が稼働していましたが、未熟たい肥投入等による土壌の悪化や需給バランスの悪さから衰退していきました。しかし近年、循環型農業が再認識され、たい肥供給システムの再構築が図られた結果、たい肥散布車が導入され、散布サービスが再開されました。
利用者である園芸部と供給者となる養豚部会が情報交換しながら、耕畜連携を進めています。

養豚農家のたい肥 
 養豚部会のたい肥成分は、表1のとおりです。
 ここで注意しなければならないことは、「豚ぷんたい肥」といっても、水分も違えば成分値もまちまちなことです。
 Aさんのたい肥は、団子状になりやすいことが悩みでした。最初にオガクズを混ぜるときに、混ぜ方が不足しているのが原因と思われました。
 Dさんは一次処置後堆積中に炭化してしまいましたが、完熟に見られる糸状菌が出ていました(図1)。水分が下がりきる前に散布した方が、埃にならず飛ばされないと思われます。

表1.供給たい肥の成分分析値

発芽試験
 安心してたい肥を野菜に使ってもらう指標の一つに、発芽試験があります。
供給実績の伸びているたい肥センターでは、発芽試験を実施している例が多い傾向があります。
今回は、発芽試験シート「たねピタ!」を使った試験を試してみました。粘着剤の着いたシートにコマツナの種子50粒をくっつけます。シャーレにシートをセットし、たい肥のろ液を注いで一晩置き、発芽の有無を調べるだけの簡易なものです。
    (図2)

シャーレにセットしたたねピタ
 Bさんは、戻したい肥とオガクズで一次発酵させ、更に1ヶ月堆積したものを販売しています。一次発酵終了たい肥を販売できるとストック場所の悩みから開放されるわけですが、発芽率は61%でした。一次発酵のみで利用するには未熟で、更に追熟が必要という結果でした。(図3、畜産センター提供)

    (図3)

   「左から対照区、製品、一次発酵終了時の発芽の様子」
(シャーレの写真)

 同じことは、発芽率67%のCさんにも言えます。他の3名は発芽率90%以上で、問題はありませんでした。(表2)

(表2).24時間後の発芽率(畜産センター調べ)

今後の課題
 一次発酵したたい肥と完成品では、成分分析しても差は出ませんし、見ただけでは品質判定は困難です。
 販売時に安心を添えるためにも、誰にでも腐熟度が判定できる簡易な発芽試験を、継続して実施して頂きたいと思います。
 また、たい肥に含まれる成分量に応じて散布量や化成肥料の増減が必要となりますので、成分分析値に注意したいものです。
 今後は、たい肥の適正施用を推進して土づくりに力を注ぐ耕畜連携が進むものと期待されます。
(農業いばらき3月号に掲載されたものです。)