はじめに
 茨城県畜産センターでは現在に至るまで,農林水産省の牧草育種指定試験地として,イタリアンライグラス品種の育成試験を実施しています。
 今までイタリアンライグラスの育種は乾物収量(反収)や耐倒伏性の向上に主眼がおかれてきましたが,近年,飼料価値向上の試みが各草種で進められていて,その一つとして現在消化性が注目されています。というのは,栽培面積及び反収が同じであれば,TDN含量を高めることでTDN収量が増加し,購入飼料で補わなければならないTDN量を減少できますし,乳牛の高能力化に伴い,限られた乾物摂取量をより有効に利用できる良質な粗飼料が求められているからです。ここでは当センターでの高消化性イタリアンライグラス品種の育成に向けた取り組みについて紹介します。

刈取時期に伴う酵素分画含量の推移
 早生品種「ニオウダチ」を用いて,概ね出穂10日前から開花期にかけて7〜15日間隔で刈取り,その酵素分画含量の推移を調べました。
 出穂10日前から出穂10日後にかけて,細胞内容物(OCC),高消化性繊維(Oa)含量は直線的に減少,細胞壁成分(OCW(=Oa+Ob)),低消化性繊維(Ob)含量は直線的に増加しましたが,その後OCC,OCW含量はほぼ横ばいになり,Oa含量の減少程度,Ob含量の増加程度も緩やかになる傾向にありました(図1)。これらのことから,イタリアンライグラスの消化率の評価は,出穂期〜穂揃期で実施した方がよいと考えられます。また,ここには示しませんでしたが,部位別に見ると,調査期間を通して葉部は相対的にOCC,Oa含量が,茎部はOb含量が高く,葉部と茎部の各酵素分画の含量の差は日数の経過に伴って大きくなる傾向にありました。さらに,葉部割合は日数の経過に伴って減少し(図2),日数の経過に伴う消化性の低下は,主に,茎部割合の増加と茎部の消化性の低下によるものと考えられました。
推定TDN含量の品種間差
 2003年と2004年の2回極早生〜晩生までの17品種を栽培,それぞれの品種の出穂期〜穂揃期(標準刈)とその7〜12日後(遅刈)に刈り取って酵素分画含量を測定,推定TDN含量を算出しました。
 乾物中推定TDN含量は概ね55〜60%の範囲にありました。両年における標準刈の推定TDN含量間と遅刈のそれとの間,及び標準刈(図3),遅刈それぞれにおける年次間の推定TDN含量において有意な正の相関が認められ,イタリアンライグラスのTDN含量に品種間差があることがわかりました。

今後の展望
 当研究室では,今年度から高消化性イタリアンライグラス品種の育成を目的とした試験を開始しています。育種目標としては,TDN含量の2〜3%向上,TDN収量の3〜5%向上を設定しています。今後は,先に述べた既往の結果等を踏まえて,効率的な高消化性イタリアンライグラスの育成に努めていきたいと考えています。

(補足)
OCC:水溶性もしくは蛋白分解酵素で分解される部分
OCW:有機物からOCCを除いた部分
Oa:OCWのうち,繊維分解酵素で分解される部分
Ob:OCWのうち,繊維分解酵素で分解されない部分


図1 イタリアンライグラスの年次別及び施肥水準別での出穂後日数に伴う酵素分画の推移

図2 イタリアンライグラスの出穂後日数に伴う
各部位の割合の推移
図3 イタリアンライグラ17品種の2003年と
         2004年の推定TDN含量の散布図