近年、農家の高齢化により耕作を放棄した遊休農地が増加しています。
 そこで、繁殖和牛を遊休農地に放牧して、遊休農地の野草を採食させることにより、飼料給与や除糞などの牛飼養管理の省力化と遊休農地解消を図る取り組みが進められ、現在、県内の遊休農地放牧の実施場所は67ヶ所、35.4haまでに増加しています。(表1)

表1 県内遊休農地放牧の推移
 しかし、遊休農地は牧草の草地ではないため、数年間放牧を行うと野草が無くなり裸地化してきます。一度、遊休農地化した農地は労働力の面からも再び耕作することが困難なことが多く、この遊休農地を低コストで省力的な方法で草地化することができれば、放牧地として永続的に活用できます。
 肉用牛研究所では在来のシバを用いて放牧地のシバ草地化の研究を行ってきました。しかし、草地の造成がシバ苗を育成し、草地に移植する手法のため、手間がかり農家への普及は難しい面があります。
 このため、平成18年度から国などの研究成果を参考にセンチピードグラス(写真1)という新しいシバ型草種の牧草を播種して、蹄耕法による草地化の試験を行っています。
 本試験の実施場所は肉用牛研究所内ではなく、現地の遊休農地で実証展示と同時に普及を図ることを目指しています。
 平成18年度は農業改良普及センターの協力を得て、常陸大田市内で4ヶ所、大子町内で2ヶ所、常総市内1ヶ所の計7ヶ所で行いました。畑だけでなく、水田、傾斜地等様々な場所で試みています。傾斜地では雨による種の流失を防ぐため、水で溶いた糊に種子を混ぜて柄杓で播く「やまかけとろろ法」を用い、種子の流失を防ぐことができました。(写真2)
 播種は6月下旬の梅雨入り直後に行いました。播種後、牛を放牧して野草を採食させながら、種を踏ませセンチピードグラスの発芽や根の活着を促します。(蹄耕法)センチピードグラスは野草の陰になると成長を阻害されるので放牧を継続して野草の伸長を抑えます。
 全面をセンチピードグラスが覆ったシバ草地となる期間は約3年とされています。
 常陸太田市内の実証試験地では1年目で被覆率が場所により異なりますが約20〜30%でした。
 来年度以降の計画では、3年後を目途にシバ草地化を完了し、その後、さらに適正な放牧頭数(放牧圧)を調査する予定です。
 現在、試験は順調に推移しているので、実証展示を行いながら、併せて普及を図っていきたいと考えています。