近年、農家の高齢化による労力不足により、耕作を放棄した遊休農地が増えてきており(県内で2万ha・県内飼料作付面積の4倍)、地域振興を図る上でも行政上の大きな課題となっております。

常総市での現地検討会の様子

検討会参加者の放牧牛

 そこで、繁殖和牛の力を借りて、遊休農地解消に役立てようと、県では、4年前から肉用牛研究所と普及センターが連携して、県北山間地を中心に、遊休農地への繁殖和牛の放牧を進めてきており、現在取り組み面積は県内で約30haと広がってきております。
 本年度の新規事業である「放牧等による遊休農地再活用推進事業」により、県西地域では常総市菅生町の和牛肥育一貫経営農家佐藤さんが、今年6月から遊休農地放牧に取り組みを始めました。その取り組みを紹介するため、筑西・結城・坂東の県西3普及センター共催により、7月26日常総市大生郷町で現地検討会を開催しました。
 検討会には、農家、近隣住民、農業委員会、関係機関等約70余名が参集し、放牧の現場を見学しました。
 結城普及センターから佐藤牧場の概況、繁殖和牛放牧に至った経緯を説明した後、畜産センター肉用牛研究所の小川首席研究員より、電気牧柵の設置方法、遊休農地へ牛を放牧するメリット等について説明がおこなわれました。

千田先生による講演会

電気放柵と放牧牛(右側がソーラー電放器)

 耕種側(土地所有者)のメリットとしては、@草刈りの手間や燃料費が不要になる。A耕作放棄された田畑を農業が即再開できる状態に保てる。(柵は簡単に設置、取り外しが出来る)B地域の景観が保てる。C山間地では獣害の防止にも役立つ。D地域のコミュニティが広がる効果も期待できます。
 畜産側のメリットとしては、@通常の家畜飼養作業(飼料の生産・調整・給与、ボロ出し作業等)が放牧頭数分削減でき省力的。A放牧中は塩と水だけの給与で低コスト。B適度な環境と運動で、繁殖成績が向上する等があげられます。
 その後、現場近くの下新田農村集落センターに会場を移し、(独)中央農業総合研究センターの千田上席研究員を講師に迎え、「遊休農林地の放牧利用の進め方」というテーマで講演がおこなわれました。
 遊休農地放牧を進めるポイントとして、個人だけの取り組みではなく、地域・集落で遊休農地及び放牧牛を管理していこうという体制づくりが、まず必要である点があげられました。
 今後、今回の現地検討会を契機に、畜産農家、遊休農地保有農家、関係機関との連携を図りながら、遊休農地放牧普及を進めていきます。