去る2月8日、県畜産センターを会場に標記の会議を開催しました。当日は畜産農家をはじめ多くの関係者に参加いただき、活発な研修会となりました。参加された皆様に紙上を借りてお礼申し上げます。ここに発表内容の要旨を紹介します。

<事例紹介>
鉾田地域における豚尿由来液状物利用技術の検討
 鉾田地域農業改良普及センター専門員
                       小堤 万里子


ねらい:各種作物に対する養豚液状コンポストの利用法について検討する。

方法:現物1t中に窒素2.7kg(うち速効性2kg)、リン酸0.4kg、カリ1kg程度を含む液状コンポストを化学肥料の窒素の代替として使用した。4t/10aを上限にホウレンソウ、カンショ、ニンジン、アールスメロンに元肥または追肥として施用して収量、規格別収量、品質を調査した。

結果:カンショ及びニンジンは液状コンポストの追肥によって収量の向上がうかがわれた。ただし、ピーマンは生育障害を起こすため利用できない。


<講演 1>
 耕種農家が求めているたい肥
 茨城県農業総合センター首席専門技術指導員
                       茂垣 慶一



現状:野菜畑は土壌養分過剰やアンバランス化が進行し、養分肥満の症状がみられる。水田では乾田化により有機物分解が進み、さらにたい肥の施用量が大幅に減少して地力が低下傾向にある。

畑作農家へのアンケート:作目によってたい肥に期待される条件が異なる。化学性(土壌養分)よりも、生物性(微生物のすみか)や物理性(孔げきや水分維持)など総合的な効果を期待するように変わってきた。たい肥利用の障害となっているものは価格と散布労力である。

良質たい肥の条件:@作物に障害がない、A作物に有害な病原菌を含まない、B有害な金属を含まない、C雑草の種子を含まない、D水分が低く取り扱いやすい、E悪臭がない。
<講演 2>
 人と自然にやさしい農業をめざして 
   栃木県茂木町農林課土づくり推進室長 
                        矢野 憲司


事業: 資源リサイクル畜産環境整備事業(農林水産省)の補助を受け、平成15年4月施設整備費約6億円をかけて「茂木町有機物リサイクルセンター美土里館」をオープンさせた。「美土里館」を核に@環境保全型農業の推進、Aごみのリサイクルの推進、B森林保全推進、C農産物の地産地消体制の確立を掲げ、地域資源の循環に取り組んでいる。

たい肥の生産:たい肥の原料は牛ふん尿、生ごみ、落ち葉、おがこ、もみがらの5種類であり、一次発酵、二次発酵、乾燥の工程を経て105日間で製品としている。製品量はたい肥1,117t/年、液肥894t/年である。牛ふん尿は酪農家13戸・600頭分を収集・運搬する(処理料徴収)。生ごみは市街地1,800世帯分を生分解性の専用袋(有料)で回収する。落ち葉は農家が集めたものを購入し(500円/15)運搬する。おがこは間伐材から製造されたものを搬入してもらう(購入または処分料徴収)。もみがらはライスセンター及び農家から収集・運搬する(無料)。

たい肥の利用:たい肥を利用しやすくするために、定期的に成分検査や発芽試験を実施している。また、農家のたい肥散布作業の請負または散布機の貸し出しを行い利便を図っている。たい肥の利用によって@野菜が柔らかくおいしくなった、A農作物品評会で多くの方が優秀賞をとるようになった、Bナス農家では虫がつかなくなり、農薬の使用回数が半減したうえに生産量が増え優良商品が多くなった、Cこんにゃく農家では土が柔らかになって掘り取りが楽になり、病気も少なく肥大率も良くなった、という声が聞かれるようになった。

地産地消:「美土里たい肥」を使った農産物を「美土里たい肥農産物」として町が認定し、学校給食に提供するとともに、シールを貼って道の駅やショッピングセンターで有利に販売されている。

今後の取り組み:原料収集、たい肥の製造、農作物の生産という地域循環システムが構築しつつあるが、これを維持発展させるためには、「美土里館」の収益を上げ自立できる管理運営をめざす。そして、町ぐるみで地域資源をたい肥化し、自然にやさしい農業を営み、美しい里山の自然環境をより良い状態で子供たちに引き継いでいきたい。