はじめに
 我が国の畜産は貿易自由化の進展を背景として、低コスト生産が求められており、その中でも飼料費の低減をはかることが課題になっています。そのため、各都道府県で主要な飼料作物についてその自然及び経営条件に適する品種を奨励品種として指定し、組織的にその普及をはかることとしています。
 茨城県でも、トウモロコシをはじめとする飼料作物選定試験の結果や近県での試験成績、種子の流通状況などを考慮しつつ、各品種の収量性や耐倒伏性、耐病性、熟期等を総合的に検討し、かつ多様な作業体系に対応できるようにバランスよく飼料作物奨励品種を選定しています。
 飼料作物奨励品種は3年ごとに改訂されます。昨年度この見直しを行い、奨励品種59品種、準奨励品種4品種が選定されました。ここでは改訂後の主要な飼料作物の奨励品種について紹介します。


トウモロコシ
 種子販売が中止された品種および同熟期で新品種より特性の劣る品種に代わって、収量性等の優れた品種が新たに指定され、トウモロコシの奨励品種は計10となっています。新たに指定された品種についてみると、「おおぞら」は他の同熟期の品種よりも多収で、トウモロコシの二期作用にも適しています。「35Y65」は緑度保持に優れ、太茎です。「KD620」は初期生育、耐倒伏性に優れ、多収です。「KD670」、「DKC61−24」は、ともに多収で、耐倒伏性に優れています。

図1 「おおぞら」の草姿
ソルガム
 「FS902」と「天高」が新たに指定されました。「FS902」は太茎、多葉で、本県でも多収であり、近隣の県でも奨励品種に指定されています。「天高」は極晩生で年内に出穂せず、極多収で、引き続き指定された耐倒伏性極強の「風立」と混播することによりそれぞれの品種の長所を生かすことができます。「天高」、「風立」は獣害でトウモロコシを栽培できない圃場でも栽培でき、また立毛貯蔵が可能で、TDN含量が低いことから、繁殖牛への給与にも適しています。

図2 「天高」および「風立」の草姿
右:天高 左:風立
イタリアンライグラス
 代表的な冬作飼料作物であるイタリアンライグラスで新たに指定されたのは極早生の「ハナミワセ」です。これは春の生育が従来の極早生品種と比べても早く、早期の収穫が可能です。加えて極早生で多収な「ウヅキアオバ」、早生で立型の「タチワセ」、早生で倒伏に強い「ニオウダチ」、中生で倒伏に強い「タチムシャ」、晩生で倒伏に強い「ヒタチヒカリ」、越夏利用が可能な「アキアオバ」、「エース」が引き続き指定されています。

飼料用イネ
 飼料用イネは従来「準奨励品種」として4品種が指定されていましたが、県内で急速に普及が進んでいることもあり、今回の改訂で「奨励品種」となりました。「ホシアオバ」は晩生、「クサノホシ」は極晩生で、ともに苗立性に優れ、直播栽培に適します。「クサホナミ」、「はまさり」はともに極晩生で耐倒伏性、葉いもち抵抗性に優れています。

最後に
 以上、主要な飼料作物の奨励品種について述
べてきました。これ以外にも飼料作物類(ライコムギ、ライムギ、エンバク、ヒエ(準奨励))、イネ科牧草(オーチャードグラス、トールフェスク、ペレニアルライグラス)、マメ科牧草(アカクローバ、シロクローバ、アルファルファ(準奨励))、飼料用カブの奨励品種も指定されています。これら草種の奨励品種名やその特性、栽培方法についてご質問がございましたら畜産センターまたは各地域農業改良普及センターまでお問い合わせください。