今年度の人事異動により,畜産課長を命じられました。本県畜産振興に尽くして参りますので宜しくお願いいたします。
 昨年の鳥インフルエンザ発生に当たりましては,多数の鶏が処分され本県畜産の歴史の中でもこれまでにない事態が起こりましたが,関係各位の皆様の,多大なるご協力により対応出来たことを感謝申し上げます。
 さて,最近の農産物(畜産)の状況は,WTO(世界貿易機関)農業交渉などが進められ,国際競争力の強化が求められております。一方米国におけるBSE発生を契機とした我が国への牛肉輸入問題は,牛肉の安全性をめぐって食品安全委員会における議論が続けられ,17年12月にアメリカ・カナダ産牛肉の輸入が再開されましたが,アメリカ産につきましては,18年1月に特定危険部位である,せき柱の混入が確認されたことから,アメリカ産牛肉の輸入手続きが停止となっております。また,アジア,欧州,アフリカと,鳥インフルエンザの発生が広がっていることから,鶏肉の関係国からの輸入が停止されたままになっております。このように畜産物生産をとりまく情勢は,多くの国際的な要因を抱えております。
 県におきましては,農業を取り巻く情勢の変化に対応するため,平成18年3月に本県農業の基本指針となる「新しい農業・農村振興計画」を策定しました。その中で畜産につきましては,安全・良質で特色ある畜産物の生産拡大を組織的に推進し,銘柄畜産物をけん引役として,本県畜産物のブランド力や生産力を向上させてまいります。また,本県が独自に策定した「畜産物生産ガイドライン」を遵守した飼養衛生管理の徹底を図り,安全・安心な畜産物を生産してまいります。
 畜産環境問題につきましては,家畜排せつ物の循環利用を進めるため,良質たい肥の生産を推進するとともに,たい肥に関する情報の積極的な提供や,畜産農家と耕種農家との連携により円滑な流通システムの整備を図ってまいります。
 次に本年度畜産課として取り組んでまいります主な施策について紹介いたします。@生産基盤の増強 A畜産経営の体質強化 B安全な畜産物の生産 C畜産環境対策の充実 D試験研究の推進と指導体制の充実を5本の柱として,各事業を推進してまいります。
 @の生産基盤の増強につきましては,各家畜の改良を通じた生産性の向上に努めるとともに,水田等を活用した飼料作物生産による粗飼料自給率向上のための取り組みを推進してまいります。また,事業実施4年目となります畜産基盤再編整備事業の茨城南部地区につきましては,畜舎施設建設など本格的な施設整備に着手してまいります。
 Aの畜産経営の体質強化につきましては,「常陸牛」「ローズポーク」「いばらき地鶏」をはじめとした県内畜産物の生産・販売の強化に取り組んでまいります。特に常陸牛につきましては,市場内外における販売促進活動や流通情報の収集等を行う販売促進専門員の設置を引き続き支援し,一層の販売力強化や信頼性の確保を図ってまいります。
 Bの安全な畜産物の生産対策につきましては,安全な畜産物を供給するため生産者段階で実践すべき事項を定めた「畜産物生産ガイドライン」の普及定着を図るとともに,常陸牛のトレ−サビリティシステムの活用を推進してまいります。
 また,「BSE対策特別措置法」に基づく24ヶ月齢以上の死亡牛につきましても,引き続き検査を実施してまいります。
 特に鳥インフルエンザ対策につきましては,生産者から定期的に死亡羽数等の報告を求め,異常鶏の早期発見に努めるほか,モニタリング検査及びサーベイランス検査の強化を図り,本県独自に監視体制や防疫体制の強化充実を図り茨城県産の鶏卵・鶏肉の安全,安心を確保してまいります。
 Cの畜産環境対策につきましては16年11月から「家畜排せつ物法」が完全施行され,不適切な保管は法規制の対象となっておりますが,応急的に簡易な施設で対応した生産者も多いことから,引き続き恒久的な施設整備への変更を支援するとともに,生産されるたい肥・液肥について,なお一層の利用促進を図ってまいります。
 Dの試験研究の推進と指導体制の充実につきましては,畜産センターにおける受精卵移植等の先端技術や環境保全技術の研究開発を進める一方,畜産経営の高度化に対応した指導体制を確立し,畜産経営の安定を図るため,畜産コンサルタント員による経営指導を引き続き支援してまいります。
 最後に,畜産を取り巻く情勢は大きく変化しており,変化に対する迅速な対応が従来にも増して求められております。今後とも県,市町村,畜産団体,生産者が連携した取り組みが益々重要となっており,本年度も引き続き皆様のご協力をお願い申し上げます。