1.自給飼料増産への取り組み
 石下町古間木地区の酪農家3戸から成る“古間木自給飼料増産組合(稲葉智信組合長)”では、今年、細断型ロールベーラを導入して飼料作物作付面積を5haから10.8haに拡大しました。
 当組合では、自給飼料を増産したいが収穫調製・サイロ詰め作業の労働力確保が障害となり、作付けを拡大できない状況にありました。昨年現地実演会が開催され、新技術「細断型ロールベーラ」の作業体系が全て機械化され作業が楽なこと、出来たサイレージも発酵品質が良好なこと、を自らの目で実際に確認できたのが細断型ロールベーラの導入につながったようです。
 機械の導入にあたっては、国の助成制度“平成17年度強い農業づくり交付金”が活用され、細断型ロールベーラ、自走式ラッピングマシーン、グローブ、フォーレージハーベスター及びマニュアスプレッダーを導入しました(表1)。なお、“強い農業づくり交付金”の飼料増産のための共同利用機械整備費に対する補助率は1/3以内ですが、細断型ロールベーラ及びマニュアスプレッダーについては1/2以内と優遇されており、より事業に取り組みやすい制度となっています。
表1 事業で導入した機械名及び事業費
機 械 名 事 業 費
細断型ロールベーラ 3,003,000円
自走式ラッピングマシーン 1,995,000円
グローブ(付属品を含む) 1,218,000円
フォーレージハーベスター 2,336,250円
マニュアスプレッダー 1,050,000円

2.細断型ロールベーラの特徴と作業体系
 細断型ロールベーラは、細断したトウモロコシを300〜350kg、直径85cmのロールに成形する機械で、ハーベスターで細断された材料を細断型ロールベーラのホッパで受け、固く成形したものをネットで結束し放出します。放出されたロールは、対応ラッパでラッピングして出来上がりです。特徴は、梱包密度が高く貯蔵期間が長くても品質が低下しないこと、サイロ詰めが不要で保管場所を選ばないことなどがあげられます。
 細断型ロールベーラは3通りの収穫作業体系に対応できます。1つは‘定置作業’と呼ばれ、ハーベスタで刈り取った細断材料をほ場の隅に止めた細断型ロールベーラのホッパにあける方式です。狭いほ場では一般的な方法で、ほ場の縁部分を収穫する枕地処理やリバース作業(バック刈り)だけで行う場合などに対応出来ます。
 2つめは1台のトラクターにフォーレージハーベスターを装着し細断型ロールベーラをけん引して作業する‘ワンマン作業’、3つめはトラクターの馬力が小さくワンマン収穫作業が出来ない時にフォーレージハーベスタに伴走して作業を行う‘伴走作業’で、ほ場や保有機械の状況に合わせた効率良い作業体系が選択ができることも魅力の一つとなっています。

3.現地検討会を開催
 石下町の組合員現地ほ場で去る8月30日、事業で導入した機械を使っての現地検討会が行われました。現地検討会は、筑西・結城・坂東地域農業改良普及センター及び茨城県草地協会が共催し、約40名の参加がありました(写真1〜4)。
 細断型ロールベールサイレージ生産体系の導入においては費用対効果が気になるところで、導入効果については(独)生物系特定産業技術研究推進機構を中心に評価試験を実施しており、また、現地検討会においては特に普及センター職員及びメーカーから導入効果とコスト等の説明がありました。
 作業効率では、細断型ロールベーラのワンマン作業体系で刈取り・収穫調製では約45〜50分・人/10aに対し従来のバンカーサイロ体系では65〜80分・人/10aと、作業時間は約2/3に短縮されています。また、ロールベーラ体系では、出来たロールベールサイレージをほ場に置きっぱなしにすることや作業途中で雨が降ってきた時には簡単に作業を中止でき、その日の都合に合わせた作業内容を柔軟に選択出来る利点があります。
 発酵品質においては、いずれの試験でもV−score*が80点
以上で良好に発酵しており、1年を経た翌年の夏期においても品質は持続し長期保存にも優れている報告がされています。
 ランニングコストは、6層巻きにした場合、消耗品費が成形したロールベールを結束するネットが約200円/個、ラップフィルムは約300円/個で、ロールベールサイレージ1個あたり約500円の経費となります。この他に、機械の燃料費が必要となっています。
*V−scoreとは発酵品質を表す。80点以上が「良」、60点〜80点が「可」、60点以下は「不良」とする。

4.今後への期待
 今後組合では、細断型ロールベーラ県内導入事例第1号として地域農業改良普及センターの指導を受けながら、作業の機械化で得た余剰労働力を使い飼料作物の作付面積を拡大して良質の自給飼料を増産していく計画です。
15:04 2005/11/22 また、細断型ロールベールサイレージ生産体系の導入効果を現場で実証していくことで、周辺地域への波及効果も期待されます。
写真1 細断型ロールベーラホッパへの投入

写真2 結束し放出されたロールベール

写真3 ラッピング作業

写真4 ロールベールサイレージ(メーカーで昨年生産)を展示

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