はじめに
現在、国内では多くの銘柄(30種位)の採卵鶏が出回っていますが、各銘柄は年々改良が進み、また、新たな系統も作出、販売されています。養鶏家にとっては採算性は勿論、それぞれの銘柄の特徴、例えば1個卵重の推移や規格別生産割合(重量別)或いは卵質等について知ることが、銘柄の選択に際して重要な要因となりますが、実際にはそれらについて客観的なデータを得ることは容易ではありません。このため、県内で多く飼養されている代表的な銘柄についてデータを得て、養鶏経営における銘柄選定の指針とするため、白色卵殻鶏4銘柄と褐色卵殻鶏4銘柄の飼養試験を行いました。
今回は白色卵殻鶏、次号では褐色卵殻鶏について報告します。
1.方 法
(1)試験鶏
県内で多く飼養される代表的白色卵殻して、デカルブ・ラムダ(以下ラムダ) 、ハイライン・ローラ(以下ローラ)、ジュリア、イサ・ホワイト(以下ホワイト)の4銘柄を選定しました。
(2)試験期間
平成12年6月から14年1月(餌付け〜560日齢)までとし、これを餌付けから140日齢までは育成期、141日齢から560日齢までは成鶏期として区分しました。
成鶏期においては28日を1期とし、1期から15期まで調査しました。卵質検査は、各期の最後の週に各銘柄30個について行いました。
(3)飼養管理
使用鶏舎及び施設は28日齢まで立体電熱育器に29〜119日齢は開放鶏舎の2段中大雛ケージ(間口91cm×奥行き82cm)に6羽ずつ、120日齢からはウィンドウレス鶏舎の3段ケージ(間口48.5cm×奥行き39cm)に、1ケージ当たり4羽収容しました。
飼料は市販配合飼料とし、120〜140日齢間は育雛後期の飼料を給与しました。点灯は1〜119日齢間は行わず、120日齢時に1時間から開始し、1週間に15分間ずつ点灯時間を漸増して、16時間到達後に一定としました。
2.結 果
(1) | 育成率は、97.1〜99.5%と全体に良い成績でした。 |
(2) | 飼料摂取量は、ローラが最も多く、以下ジュリア、ホワイト、ラムダの順で、140日齢時体重も同じ順番でした。 |
(3) | 50%産卵日齢は、ローラが最も早く、以下ジュリア、ホワイト、ラムダの順で、飼料摂取量、140日齢時体重に比例した成績でした。50%産卵時の卵重は最も早かったローラが軽く、最も遅かったラムダが重い結果となり、日齢の遅いものほど重くなる傾向を示しました。 |
(4) | これらの結果から、飼料摂取量、体重、50%産卵日齢及び卵重がそれぞれ密接に関係していることが判ります。 |
表1. 育成期(1〜140日齢)及び50%産卵到達時成績
銘柄 |
育成率 (%) |
飼料摂取量 (g/羽/日) |
体重 (g,141日齢時) |
50%産卵到達時 |
日齢(日) |
卵重(g) |
ラムダ |
98.1 |
42.5 |
1,315 |
164 |
53.3 |
ローラ |
99.5 |
46.1 |
1,419 |
154 |
50.7 |
ジュリア |
98.6 |
45.2 |
1,355 |
156 |
52.5 |
ホワイト |
97.1 |
44.3 |
1,351 |
160 |
51.9 |
(5) | 産卵率はジュリアが最も優れ、他の3銘柄間の差は小さいものでした。また、ジュリアは試験の後期においても産卵低下が少なく、持続性も優れていました。 |
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(6) | 平均卵重はジュリアが最も重く、他の3銘柄間の差は小さいものでした。 |
(7) | 産卵日量はジュリアが最も多く、次いでローラ、ホワイト、ラムダの順でした。 |
(8) | 飼料摂取量はラムダが最も少なく、最も多かったジュリアとの差は11.6gもありました。 |
(9) | 飼料要求率は、飼料摂取量が多かったものの産卵日量も多かったジュリアが最も優れ、次いで飼料摂取量が少なかったラムダが 良い成績でした。 |
(10) | 体重はローラが最も重く、他の3銘柄間の差は小さいものでした。 |
表2. 成鶏期(141〜560日齢)
銘柄 |
産卵卓 (HD) (%) |
平均卵量 (%) |
産卵日量 (g/羽/日) |
飼料摂取量 (g/羽/日) |
飼料 要求率 |
体重 (g,560 日齢時) |
ラムダ |
77.0 |
62.3 |
48.0 |
95.3 |
1.99 |
1,657 |
ローラ |
79.8 |
62.9 |
50.2 |
102.5 |
2.04 |
1,833 |
ジュリア |
85.0 |
64.2 |
54.6 |
106.9 |
1.96 |
1,693 |
ホワイト |
79.9 |
61.9 |
49.5 |
101.3 |
2.05 |
1,687 |
(11) | 規格別生産割合において、取引価格が有利であるL、M、MSの割合が最も高かったのは、ホワイトで85.9%、以下ローラ、ラムダ、ジュリアの順でした。 |
表3.卵の規格別生産割合(1〜15期の平均%)
銘柄 |
以上 |
LL |
L |
M |
MS |
S |
SS |
以下 |
L+M+MS |
ラムダ |
1.8 |
8.7 |
27.2 |
38.0 |
18.8 |
5.3 |
0.2 |
0.0 |
84.0 |
ローラ |
2.1 |
9.1 |
34.5 |
36.8 |
13.3 |
3.8 |
0.3 |
0.0 |
84.6 |
ジュリア |
1.8 |
13.5 |
37.1 |
32.3 |
12.1 |
2.9 |
0.2 |
0.1 |
81.5 |
ホワイト |
1.3 |
6.6 |
29.2 |
39.1 |
17.6 |
5.3 |
1.0 |
0.1 |
85.9 |
(12) | 卵質のハウユニットについては、ホワイトが特に優れた値を示しました。卵殻強度はジュリアとホワイトが優れ、卵殻厚もこの2銘柄が僅かですが厚い結果となりました。卵黄色はジュリアがやや濃い値でした。 |
(13) | 収益性は、収入(規格別重量×規格別卵価)から支出(雛代+飼料代)を差し引いた値で示しました。最も収益性が高かったのは、産卵性の多くの項目でトップであったジュリアで、他の3銘柄間の差は小さなものでした。 |
表4.卵質検査成績(1〜15期の平均)及び収益性
銘柄 |
ハウユ ニット |
卵殻強度 (s/cm2) |
卵殻厚 (mm) |
卵黄色 (カラー ファンNo) |
卵黄 重量(g) |
粗収益 (円/羽) |
ラムダ |
77.1 |
3.46 |
0.37 |
9.7 |
16.7 |
1,744 |
ローラ |
81.3 |
3.49 |
0.37 |
9.7 |
16.4 |
1,794 |
ジュリア |
82.2 |
3.62 |
0.38 |
10.2 |
17.0 |
2,009 |
ホワイト |
87.2 |
3.61 |
0.39 |
9.5 |
16.5 |
1,785 |
この結果、各銘柄の特徴として、
(1) | ラムダは飼料摂取量が少なく飼料要求率が優れること、規格MとMSの割合が高いので、小さい規格の卵価が高いときは有利になること、 |
(2) | ローラは50%産卵日齢が早いこと、規格LとMの割合が高いので、大きい規格の卵価が高いときは有利になること、 |
(3) | ジュリアは産卵性の各項目において優れており収益性が高いこと、卵殻質が優れること、 |
(4) | ホワイトは取引上有利な規格であるL+M+MSの割合が高いこと、卵質のハウユニットが特に優れること、などが明らかになりました。 |
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