この度の人事異動により、畜産課長を拝命いたしました。本県畜産振興のため、全力を尽くしてまいりますので、よろしくお願いいたします。
 最近の畜産情勢は、昨年メキシコとの間で豚肉を含む自由貿易協定が締結されたのに続き、本年はフィリピン、タイなどアジア諸国との交渉の進展が予想されております。一方、アメリカにおけるBSE発生を契機とした我国への牛肉輸入停止問題は、牛肉の安全性をめぐって食品安全委員会における議論が続けられ、輸入再開までには至っておりません。また、タイ、ベトナムなどでは鳥インフルエンザの発生が続いていることから、鶏肉の関係国からの輸入が停止されたままとなっております。このように畜産物生産をとりまく情勢は、多くの国際的な要因を抱えております。
 県におきましては、現在、農業を取り巻く情勢の変化に対応するため、平成18年度からの本県農業の基本指針となる「新しい農業振興計画」の策定に着手しております。その中で畜産につきましても、生産履歴の開示などによる安全な畜産物の生産、銘柄畜産物の販売促進を通じた県全体の畜産物生産の振興、さらに家畜排せつ物のリサイクル利用の促進など、今後の畜産振興を図る上での重要な方策についての検討が進められていくものと考えております。
 次に、本年度畜産課として取り組んでまいります施策について紹介いたします。
 @生産基盤の増強A畜産経営の体質強化B安全な畜産物の生産C畜産環境対策の充実D試験研究の推進と指導体制の充実以上5本の施策を柱として、以下の各種事業を推進してまいります。
 @の生産基盤の増強についきましては各家畜の改良を通じた生産性の向上に努めるとともに、水田等を活用した飼料作物生産による粗飼料自給率向上のための取り組みを推進してまいります。
 また、事業実施3年目となります畜産基盤再編整備事業の茨城南部地区につきましては、畜舎施設建設など本格的な施設整備に着手してまいります。
 Aの畜産経営の体質強化につきましては「常陸牛」「ローズポーク」「いばらき地鶏」をはじめとした県内畜産物の生産・販売の強化に取り組んでまいります。特に、常陸牛につきましては本年度新たに、市場内外における販売促進活動や流通情報の収集等を行う販売促進専門員の設置を支援し、一層の販売力強化や信頼性の確保を図ってまいります。
 Bの安全な畜産物の生産対策につきましては、安全な畜産物を供給するため生産者段階で実践すべき事項を定めた「畜産物生産ガイドライン」の普及定着を図るとともに、常陸牛のトレサビリティーを促進してまいります。
 また、「BSE対策特別措置法」に基づく24ヶ月齢以上の死亡牛検査につきましても、引き続き実施してまいります。
 Cの畜産環境対策につきましては、昨年11月から「家畜排せつ物法」が完全施行され、不適切な保管は法規制の対象となっておりますが、応急的に簡易な施設で対応した生産者も多いことから、引き続き恒久的な施設整備への変更を支援するとともに、生産されるたい肥・液肥について、なお一層の利用促進を図ってまいります。
 Dの試験研究の推進と畜産指導体制の充実につきましては、畜産センターにおける受精卵移植等の先端技術や環境保全技術の研究開発を進める一方、畜産経営の高度化に対応した指導体制の確立と経営安定のための、畜産コンサルタント員による経営指導の支援を引き続き実施してまいります。
 最後に、畜産を取り巻く情勢は大きく変化しており、変化に対する迅速な対応が従来にも増して求められております。今後とも県、市町村、畜産団体、生産者が連携した取り組みが益々重要となっており、本年度も引き続き皆様のご協力を重ねてお願い申し上げます。
1 生産基盤の増強
事 業 名 予算額 事 業 内 容
家畜改良増殖対策
 乳用牛群総合改良推進事業

 農協有等家畜導入事業

 広域後代検定推進事業

 優良種豚育種効率向上推進事業

 畜産共進会事業

飼料対策
 飼料特別対策事業

 耕種作物等利用自給飼料増産事業

 畜産基盤再編総合整備事業


6,000

2,760

9,416

5,403

2,699


5,992

16,000

140,956

 乳用牛の能力を検定し、群としての能力の向上を図るとともに、飼養管理の改善に質する。
 黒毛和種繁殖用雌子牛の導入を行うための基金造成に対して補助することにより、肉用牛資源の拡大を図る。
 優良な肉用繁殖雌牛群の整備と計画的な交配により、産肉性の高い種雄牛の造成を図る。
 民間の種豚生産者を組織化して、種豚改良群を確保することにより、能力の高い種豚牛の造成を図る。
 畜産共進会開催に対して補助することにより、家畜の改良増殖を推進する。


 飼料作物等の生産性の向上、利用の促進を図るため、推進活動を通じて、飼料自給率向上への高揚を図る。
 稲発酵飼料や稲わら等を活用するための収穫・調製機械の導入に対し補助し、自給飼料の増産を図る。
 草地の造成等飼料生産基盤の強化を図るとともに、畜産施設の整備により、中核的畜産農家を育成する。
 
2 畜産経営の体質強化
事 業 名 予算額 事 業 内 容
金融対策
 畜産特別資金対策

 畜産振興資金貸付金

経営対策
 肉畜鶏卵生産出荷調整事業

 畜産物価格補償事業

 系統豚普及・銘柄豚生産体制強化
 事業

 いばらき畜産物ブランドアップ対策
 事業


 常陸牛販買強化支援事業 (新)

 いばらき地鶏普及促進事業

 常陸牛銘化柄確立事業

 食肉流通体制整備事業 (新)

 酪農ヘルパー組織強化事業(新)


1,269

841,000


3,298

12,469

2,900


21,883



2,500

300

1,880

100,000

5,040

 畜産特別資金借受者に対して、利子補給することにより貸付条件を緩和し、畜産経営の体質強化と発展を促進する。
 畜産関係団体に事業運営の円滑化のための事業資金を融資することにより、畜産農家の経営の安定と畜産物の流通合理化を図る。

 肉豚、鶏卵、鶏肉の生産出荷動向予測調査の実施により、安定的な生産と経営の安定を図る。
 豚の枝肉価格は年間の価格変動が大きく、不安定である。このため、価格低落時に価格補償を行うことにより、経営の安定を図る。
 種豚としての系統豚の活用と銘柄豚肉「ローズポーク」の生産振興を推進し、銘柄豚生産基盤の強化を図る。

 繁殖和牛頭数を拡大し、優良子牛を安定的に供給できる体制を整備するとともに、効果的な消費拡大対策の実施により、常陸牛販売店舗の拡大とブランド力の向上を図る。

 常陸牛販売促進専門員の設置を支援し、出荷販売計画の調整、流通業者への売り込み等流通販売体制の強化を図る。
 いばらき地鶏のPR活動を支援することにより、地鶏の普及と銘柄の確立を図る。
 常陸牛の品質向上と消費者への消費流通促進対策の実施により、銘柄の確立を図る。
 茨城県中央食肉公社におけると畜頭数増加に対し、冷蔵庫の増設等施設整備を図る。
 酪農経営を安定的に継続していくため、農家が休日を確保するヘルパー制度の円滑な推進を支援する。

3 安全な畜産物の生産
事 業 名 予算額 事 業 内 容
家畜衛生対策
 家畜衛生対策事業

 家畜衛生特別対策事業

 高病原性鳥インフルエンザ監視体
 制整備事業

畜産物生産安全性確保対策
 畜産物生産ガイドライン普及定着事
 業

 牛海綿状脳症検査推進事業

 死亡牛牛海綿状脳症検査補助委
 託事業
 家畜伝染病予防事業

 自衛防疫強化総合対策事業

 地域自衛防疫推進事業

35,804

9,253

8,268



1,104


71,053

20,625

41,570

7,055

17,210

 地域の家畜衛生水準の維持・向上を図るための衛生検査、巡回指導の実施により、安全な畜産物生産の確保を図る。
 家畜保健衛生所の疾病診断技術や機器の活用による迅速な検査の実施により、畜産物の安全な供給体制を確保する。
 高病原性鳥インフルエンザ監視体制の強化と万が一の発生に備え、初動防疫に必要な資材、消毒薬等の備蓄を図る。


 安全・安心な畜産物を生産供給する体制を確立するため、県において策定した「畜産物生産ガイドライン」の普及・定着を図る。

 BSEの原因究明のため、24カ月以上の死亡牛全額を検査し、その発生及びまん延の防止を図る。
 死亡牛検査の円滑な実施のため、検体採材補助、死亡牛管理、検査補助業務を委託する。
 家畜伝染病の発生予防及びまん延防止のための検査等を実施する。

 各種家畜伝染病の発生を防止するために実施する自衛防疫活動に対し補助し、自衛防疫組織の強化を図る。
 口蹄疫等悪性伝染病の発生を想定した、市町村単位の地域防疫体制を整備する。

4 畜産環境対策の充実
事 業 名 予算額 事 業 内 容
畜産環境対策
 資源循環型畜産確立指導事業

 地域畜産環境整備対策事業

 たい肥品質診断推進事業

 地域資源循環畜産環境対策事業

 畜産資源リサイクル促進事業

 地域循環型液状コンポスト利用促
 進事業(新)

3,480

199,781

1,152

23,000

1,000

964

 畜産農家に対する巡回指導や実態調査を実施することにより畜産経営に起因する環境問題を防止する。
 畜産農家の組織化や耕種農家との連携による家畜排せつ物処理施設等の整備に対し補助することにより,地域環境の保全を図る。
 地域土づくり応援団との連携のもと、たい肥の品質分析等を実施し、円滑な流通を促進する。
 畜産農家の組織化や耕種農家との連携による家畜排せつ物処理施設等の整備に対し補助することにより、地域環境の保全を図る。
 茨城県たい肥利用促進協議会が行う活動に対し補助し、良質たい肥の生産やたい肥利用の促進を図る。
 畜産農家、耕種農家及び関係機関の協力・連携により現地試験を行い液状コンポスト活用技術を明確にし、適正な利用を促進する。

5 試験研究の推進と畜産指導体制の充実
事 業 名 予算額 事 業 内 容
 畜産センター費
 畜産経営指導事業

 畜産経営指導体制円滑化事業

 畜産経営改善技術指導事業

 畜産協会組織強化事業
222,994
8,159

1,100

15,304

13,340
 畜産センター試験研究費、運営費
 畜産経営の指導体制を整備し、畜産コンサルタント団による経営指導や研究会・研修会の開催を通じて、畜産経営の高度化を図る。
 畜産に関連した情報の収集,収集した情報の分析並びに畜産農家への提供により、将来生産者の中枢を担う者の育成を図る。
 畜産農家の総合的な経営指導を行う畜産コンサルタント員を設置し、その指導を通じて畜産経営の高度化を図る。
 畜産情勢の変化に対応した経営指導ができる体制を整備するため、(社)茨城県畜産協会の体制を強化する。