はじめに
 平成12年に県内畜産関係試験研究機関が統合されて畜産センターが発足し、当研究所も肉用牛に特化した試験研究機関としてスタートを切りました。これを契機に黒毛和種種雄牛の後代検定を間接検定法から現場後代検定法に移行し、より正確な、より現場に即した検定ができることとなりました。現在まで9頭の種雄牛候補牛の検定が終了し、うち3頭が種雄牛として選抜されています。
種雄牛造成の流れ
 和牛の種雄牛造成は育種価評価を前提にして、間接検定から現場後代検定へと大きく流れています。これは、間接検定では肥育期間が1年間と短く出荷が早いため、通常に出荷された結果と必ずしも一致しないことや、そもそも格付けの評価が違うこと(日本格付協会の評価ではない)などから、検定成績に生産者から疑問の声が挙がっているからです。
 さらに、現場後代検定では育種価評価によることから、年度を越えて全ての候補牛の成績を比較できます。本県でも同一年度に終了した牛から良いものを選ぶのではなく、過去の牛あるいは他県や改良事業団との牛とも比較をして選抜、淘汰を決めています。
茨城県における種雄牛造成
 種雄牛の候補牛は、県内のトップクラスの能力を持った繁殖牛に「北国7の8」や「平茂勝」、「明光4」といったスーパー種雄牛を交配して生産されます。母牛の能力が県で1番や2番などという候補牛もいます。候補牛の兄弟の肥育成績は、BMSナンバー12,11なんて牛がゴロゴロいます。血統的にはピカイチの牛ばかりです。こうして生まれた子牛は、本当に父と母の能力を受け継いでいるかどうか何回もテストされます。生後3、4
ヶ月での発育検査。肉用牛研究所での直接検定。そして、最後のテストが、現場後代検定です。これに合格したものだけが種雄牛となります。但し、現在ではこの後も引き続き育種価による評価が続けられます。産子の肥育成績が落ちれば育種価が下がり、すなわち淘汰されることとなります。
表−1 検定牛の血統と兄弟牛の成績
現場後代検定の成績
 表−2に現場後代検定の成績を載せました。選抜された3頭は、いずれもBMSナンバーの平均が去勢、雌にかかわらず5.0以上の数値になっています。BMSナンバーが5以上ということは、とりもなおさず常陸牛に認定される4等級以上の脂肪交雑が入る枝肉だということです。常陸牛の素牛生産を図る目的からこのラインとなりました。
表−2 現場後代検定の成績
「北国安福」は全体で5.0でしたが、去勢が4.4と低かったので選抜されませんでした。枝肉重量では「安豊福」、「茨北安」は全体の平均で430kgを超え水準以上でしたが、「北国栄」は394kgと小さめでした。しかし、去勢では413kgあったこと、BMSナンバーが5.6とすばらしい数値であったことにより選抜されました。本県の選抜は脂肪交雑に重きを置いたものとなっています。
検定牛の育種価
 表−3に検定牛の育種価と正確度を併記しました。育種価は表−1の生のデーターから供試牛の母牛の影響や、肥育農家の影響、検定実施年の影響など諸々のものを除いた検定牛の能力を表した数値です。県の全平均からどれだけ優れているかを表しています。ここでも特筆されるのは、脂肪交雑での「北国栄」と「茨北安」の育種価の高さです。「北国栄」は1.568、「茨北安」は1.842です。両牛の父である「北国7の8」が1.695ですので、その能力の高さが伺えます。
表−3 検定牛の育種価

 例えば、「北国栄」を、同じ能力を持った繁殖牛に交配して生産された去勢牛の平均はBMSで2.8、すなわち3−、BMSナンバーでいえば9の能力を持っていると推定されます。県の平均レベルの能力を持った繁殖牛(本県で育種価評価が開始されてからの全牛の平均ということで、現在供用されている牛は改良が進んでいることから結構多い)に交配された場合でも、平均はBMSナンバー7になります。
 「北福17」は、脂肪交雑育種価1.274、「北国安福」は1.255、枝肉重量育種価もそれぞれ高い数値でしたが、ともに「北国栄」や「茨北安」と同じ「北国7の8」の子ということで淘汰しました。
その他
 「明光4」、「安福秀」の最近の動向について肉用牛研究所に情報が入ってきましたので報告します。
「明光4」
 本県を代表する種雄牛です。産子は飼いやすく増体能力に優れていることで定評があります。ロース芯面積が大きいことでは全国でもピカイチです。産子の肥育成績は安定していて、肥育農家に損はさせない牛です。この秋、各共励会ではすばらしい成績を上げています。第36回全農茨城県本部常陸牛枝肉共励会優秀賞、第49回茨城県常陸牛枝肉研究会優良賞。交雑種の部でも、第22回茨城県北肉牛枝肉共進会優良賞を受賞しています。
「安福秀」
 安福秀の産子は、増体に問題があるとのことで、安福秀を敬遠している向きがあるようです。しかし、その脂肪交雑能力は大変優れていることは明らかです。本年度から一般肥育産子が出荷されてきましたたが、9月に第29回茨城みどり農協枝肉共励会優秀賞を受賞したのを皮切りに、交雑種でこの10月、11月にかけて第7回県南肉用牛枝肉共励会最優秀賞、第22回県北肉牛枝肉共進会優秀賞と連続してトップに輝きました。特に、県北肉牛枝肉共進会の成績は、枝肉重量546kg、BMSナンバー7(8と言ってもおかしくないような枝肉でした)、B−4とすばらしいものでした。このとき、「安福秀」の産子は他に2頭いましたがいずれもBMSナンバー4、B−3でした。県南肉用牛枝肉共励会ではBMSナンバー6、B−4でした。
 共励会の成績だけでなく、「安福秀」の交雑種は良いとの評判を同時に数人の方からお聞きしました。一般出荷の東京や大阪でも、脂肪交雑4等級、BMSナンバー7,6を連続して出しているとのことです。是非、増体能力の高い繁殖牛への交配や交雑種生産に利用頂きたいと思います。