ヨーネ病は、結核病やブルセラ病のように人にも感染する人獣共通感染症ではありませんが、その病原体が農場にまん延すると畜産農家は大きな損害を受けるなど注意を要する病気です。ヨーネ病は、「家畜伝染病予防法」で「監視伝染病」に指定されており、同法による検査が義務付けられ、平成11年度から定期検査を実施し、清浄化を図ることになりました。
県内での発生状況
 県内でのヨーネ病の年間摘発頭数は、平成11〜13年までは各年10頭以下でしたが、平成14年は24頭、平成15年は31頭と年々増加の傾向がみられます。また、全国においても年間700頭以上の発生が認められており、県内での発生増加傾向とあわせ、家畜防疫上特に注意を要する状況にあります。
ヨーネ病摘発頭数の推移

ヨーネ菌の特徴
 ヨーネ病の原因は、細菌です。抵抗力が非常に強い細菌で、土壌中で約250日、水中でも160日間生存できるといわれています。また、酸に強いこともこの菌の特徴です。他の細菌との大きな違いは、増殖スピードが非常に遅く、増菌するのに長時間を要することです。このような特徴がヨーネ病を厄介なものにしているといえます。
ヨーネ病の症状
 ヨーネ病は、ヨーネ菌が感染してもすぐには症 状が現れません。これは菌がゆっくりとしか増殖できないためで、感染してから数年かかるといわれています。発病する年齢で比較的多いのは3〜5歳で、特に分娩後に発病することが多いとされています。ヨーネ菌が十分に増加すると水様性の慢性下痢をするようになり、次第に痩せて衰弱していきます。また、ヨーネ病に感染した牛は、発病前の無症状でも糞便中、初乳中に菌を排泄することがあります。さらに、現時点ではヨーネ病に対し根治可能な抗菌薬やワクチンがないこともあり、感染牛の摘発・淘汰と糞・初乳からの感染防止に基づく衛生管理がヨーネ病防疫に最も効果的といえます。
発病した牛の外貌


「牛のヨーネ病の侵入を防ぎましょう」より
ヨーネ菌のターゲットは子牛!
 ヨーネ病は特に生後1週間くらいまでの子牛が感染しやすく、1,000個のヨーネ菌を実験的に経口投与したところ感染が確認されています。また、感染中は発病する前から糞便中に排菌するようになり、ヨーネ菌を糞便と共に撒き散らします。発病牛が一日に排泄する糞便中には5兆個の菌が存在するともいわれており、成牛と子牛が容易に接触できる飼養管理は、同居牛に限らず子牛への汚染源にもなります。さらに、糞便の他に、生後に母乳を介して感染することもあるため、ヨーネ病に感染している牛の子は感染する危険性が格段に高くなります。
ヨーネ病の検査
 ヨーネ病に感染しているかどうかは血液中の抗体を測定して判定します。血液中にヨーネ菌に対する抗体が存在すれば、ヨーネ菌に感染していることの裏づけになり、これはエライザ法という検査法で調べることができます。その他にも糞便から長期間(2〜4ヶ月)培養することでヨーネ菌を分離する方法もあります。
ヨーネ病発生後の措置
 ヨーネ病患畜と診断された牛は、「家畜伝染病予防法」に基づき殺処分となります。
 茨城県ではヨーネ病発生農場において「牛ヨーネ病防疫対策実施要領」に基づき、まん延防止および清浄化を目指しております。発生後3年間、原則として年2回以上の立ち入り検査を実施して清浄性を確認します。
ヨーネ菌に有効な消毒
 ヨーネ菌に有効なものは、塩素剤と石灰です。特に石灰はアルカリ化によって消毒効果を発揮するため、酸に強いヨーネ菌に効果的で、石灰乳(生石灰20〜30%水溶液)塗布や顆粒状消石灰散布を実施します。
ヨーネ病から牛を守るために
 茨城県では、ヨーネ病に対し前述の定期検査による患畜の摘発・淘汰と衛生管理指導を実施しておりますが、近年の摘発牛頭数の増加傾向から、再度ヨーネ病に対する危険度管理を徹底していただくために、以下の対応策をご紹介します。
1)外部からヨーネ菌を持ち込まないために
@新規導入牛についてはヨーネ病非発生農場で 生産された牛であることを確認する。
A畜舎毎に踏み込み消毒槽を設置し、長靴消毒 を励行する。(専用の衣服や長靴を用意する のもよい)
B車両消毒を実施する。
C不必要な車両・人の出入りを禁止する
2)子牛への感染を防ぐために
@分娩房を設置する。
A哺乳牛を成牛から隔離し、カーフハッチや育 成房等を設けて育成する。
B成牛の後ろに子牛を繋留しない。
C 初乳は子牛にとって母牛から様々な免疫を付 与されるのに重要ですが、給与の際は以下の点に注意することが必要です。
プールした初乳の給与は集団感染の原因になるので避ける。
給与前に63℃30分の加熱処理を実施する。(初乳の抗体活性に大影響なく、ヨーネ菌を殺滅することができます。)
市販の代用乳・ヨーネ菌フリー初乳を利用する。
3)その他、日常の衛生管理として
@家畜の健康状態、導入・販売実績、産歴等を 管理記録簿に記録する。
A除糞をまめに行う。
Bたい肥は十分熟成させ、戻したい肥を避ける。 (たい肥中のヨーネ菌は60 以上発酵熱下に  おいて、数週間で殺滅される。)
C作業動線の見直し:糞便による経口感染(特に子牛について)を防ぐことに留意する。
原因を特定できない下痢や乳量の低下、急激な 削痩などが見られた場合はヨーネ病を疑い、家 畜保健衛生所の検査を受けることをお勧めします。