「おいしい牛肉として思いつくもの」というアンケート(電通東日本の調査)において、1位が松坂牛、2位が神戸牛、3位以下は、近江牛・米沢牛・但馬牛・飛騨牛・佐賀牛・三田牛・前沢牛・山形牛の順に並び、なんと10位は(山形牛と同率で)オージービーフという結果が出たそうです。輸入牛肉がランクインしたことは、常陸牛が入っていないこと以上に驚かされました。この結果から消費者にとってのおいしさの基準は「知名度」であるように思われますが、「知名度のあるブランド牛=霜降り牛肉=おいしい牛肉」という関係は、本当に成り立つのでしょうか。

 最近では、「見かけは良いが味がない牛肉が多い。」とか「○○牛は品物が落ちた。」「仕入値と品物に差がありすぎる。」等と、今の銘柄牛を悪く言う声が食肉関係者からよく聞かれるようになりました。食肉販売店等では、牛肉トレサビリティが確立された結果として新たなブランド探しを始める動きも進んでおります。個体識別番号で生産者が明確になる動きは、逆においしい牛肉を判明させるきっかけにもなります。これからの牛肉は、知名度優先の地域ブランドでなく、おいしさによって差別化されるように変化するのではないでしょうか。
 本会の直営牧場では、和牛肥育の新技術として3年ほど前から「BIOバガス」や「ビタミンC」の給与方法を管理マニュアルに取り入れました。「BIOバガス」は、稲ワラ以上に繊維質が豊富で丈夫な胃袋作りに役立つ以外にも、バニリン(バニラエッセンスの素となる成分)により牛肉の風味が増すともいわれております。
 また、「ビタミンC」はサシの素となる脂肪前駆細胞の分化を促進する働き以外にも、融点の低いおいしい脂肪を作ったり製品の酸化(劣化)防止にも効果があると考えられます。
 その成果か、最近こだわりをもつ料理店等からの引き合いや問い合わせが増えるようになりました。本会でも、他県産のブランド牛との比較試食会を何度か開催しましたが、そのたびに味に対する自信を深める結果が得られました。とかく肥育農家は見た目の枝肉格付を重視しがちでありますが、味に対するこだわりをもつことも牛肉生産にとって大切なことではないでしょうか。
 先日、本会の肉用牛振興研修農場へ、韓国からの視察(20名)がありました。韓国でも日本同様に霜降り牛肉の生産に強い関心を持っており、「BIOバガス」や「ビタミンC」を含む本会の飼養管理方法などを熱心に見ておりました。韓国の霜降り牛肉生産レベルは、日本の和牛改良の歴史からすれば、まだまだ足元にも及びません。現在日本に輸入牛肉が入っているように、いずれ高級和牛を中国や韓国等、一部の大金持ち向けに輸出できる日が来るかもしれません。
 景気の低迷から高級牛肉の相場は今ひとつ伸び悩んでおりますが、おいしくて品揃いの良い常陸牛にとっては、今がブランド化に向けた絶好のチャンスであります。食肉市場では有名なのに一般消費者には馴染みが薄く、以前は松坂牛にも化けていたとも言われた影のブランド常陸牛が、今まさに日の目を見られる時期がきております。現に東京近郊では、松坂牛の看板を常陸牛に変えた有名ステーキ店を始め、こだわりをもつ食肉販売業者が常陸牛の良さに気づき始めております。この動きは、茨城県内の和牛肥育農家の技術レベルの高さからすれば当然であり、今後ますます広がるものと思っております。
 本会では、今後も牛肉のおいしさにこだわりをもちながら、関係機関等と連携して常陸牛が名実ともに全国ブランドとなれるように力を尽くしていきたいと考えております。茨城県の名産品といえば、いの一番に「常陸牛」と思い浮かぶように、皆で頑張りましょう。