家畜排せつ物法に係る管理基準に対応した整備が間に合わない畜産農家も少なくないと考えられるので、茨城県畜産協会では先進事例の現地研修を行った。この中から、比較的に畜産農家が取り組みやすいと考えられた「シート利用による堆肥化システム」について前に報告したが、これは県内の畜産農家の現況から見ると、一時しのぎ的な施設と考えられた。今回は茂木町が設置運営を行っている「美土里館」について紹介する。

 この施設の最も特徴的なことは茂木町という行政組織が直接、設置運営を行い、資源の地域内循環を目指して取り組んでいる事である。
 乳牛のふん尿やもみ殻、市街地などの1,800世帯を対象とした生ごみ、森林の間伐材、枯れ葉等を集め、良質な堆肥を作り、農地に還元、できた野菜は地域の直売所で差別化商品としての販売や小・中学校の給食にも使用する等の地産地消を進めるともに、ごみ焼却時に排出されるダイオキシンを減らす環境対策や、落ち葉を買い取ることにより山林の環境保全まで考えた取り組みである。
 やや、問題が残ると考えられたのは堆肥化原料の安定的な確保(落ち葉、もみ殻のように季節的なもの)や生産物(堆肥・液肥)の利用方法であった。また、この施設を利用する側の適正な負担(畜産農家の処理料、旅館やスーパー等の生ごみ処理料)や堆肥化材料の安定した収集組織の確立等、行政としての課題も多いと考えられた。堆肥1,100トン、液肥900トンが年間に生産される計画との事である。 特に、液肥の利用は、茨城県内では畑作への還元が主体となる。液肥の還元は作付け作目に左右されやすく、年間を通じた平均的な活用は難しく、季節的な偏りが発生してしまう。液肥の還元農地の確保が課題となるのでないかと考えられた。欲を言えば、堆肥化処理過程で液分処理を行い液肥発生の無い(理想)システム開発が望まれる。
1 有機物リサイクルセンター美土里館
 恵み豊かな環境を維持しながら、持続的な発展を図るために、地球規模で環境を考え、日常生活や事業活動、まちづくりなどの総ての面で社会システムや人々の意識を考えていくことが必要である。廃棄物や地域の未利用資源のリサイクルを進め、自然の持つ循環システムと調和した農業を目指している。

1)たい肥センターはこのシステムの中心となる施設で、堆肥化原料の搬入・たい肥生産を行い、未利用資源を有機質肥料にリサイクルする。
2)畜産農家は家畜ふん尿を有料で処理を依頼することにより、畜産環境に費やす経費や労力、悪臭や地下水汚染等の環境に対する負荷を軽減ができると考えられる。
3)耕種農家では、この良質な堆肥を使用して安全で良質な野菜を栽培しJAの直売所で差別化された有利な販売を行うことができる。また茂木町では町内の小・中学校に町内産の米を供給しているが、野菜も加える計画を立てている。もみ殻は専用車で回収(年間見込み250トン)され販売代金の収入を得ることができる。
 ばら堆肥は現場に運んで1トン4千円で提供され、トン1千円でマニュアスプレダーによる散布も行われる。袋詰め堆肥はJAはが野から販売、液肥は無料で提供される。
4)森林資源の間伐材は無料でセンターが引き受けている。特に町内の農家が集めた枯葉は1袋(15kg)450円で買い上げ、山林の再生を促している。年間に枯葉250トンが見込まれている。
5)一般家庭には生ごみの水切り用押し付け器具と二重底水切りバケツを無料で配布し、全世帯を対象に分別収集の説明会を開催している。スーパーや鮮魚店、旅館などから出る生ごみは有料処理となっている。
2 堆肥化施設
 この堆肥化施設は、家畜のふん尿と一般家庭からの生ごみ、調整材として籾殻、枯葉、間伐材などの森林資源を利用して有機肥料を製造して農地に還元し、リサイクルを推進することで、自然と調和した環境保全型農業の確立を目指すものである。堆肥化製造工程の中心に円形発酵攪拌処理施設を設置してスクリュー攪拌機による大量処理を可能にしたもので、発酵により発生した臭気対策として、ブロアー収集による脱臭設備も完備し、人と自然にやさしい環境保全を重視した設備にな っている。
1)堆肥化作業の流れ
 場内に搬入された原料は、トラックスケールによって自動計量されて、原料投入装置に投入され混合機によって混合され搬送される。
 次に円形発酵装置でエアレーションとスクリュー攪拌機によりバランスの良い発酵が促進される。
 さらに二次発酵攪拌槽にて完熟度を十分に高め、作物の生育障害の発生しない良質で安全な堆肥が得られる。
 堆肥化された原料は次の工程で自然の風と太陽の熱エネルギーを利用した、省エネ化された乾燥機により水分率の低い最良の堆肥となる。
 最後に、自動袋詰装置により粗大異物が取り除かれて良質な堆肥のみが計量袋詰される。またスラリー状のふん尿は固液分離され液肥化装置により液肥となり圃場に還元される。

2)概要

事業概要
  ●施設名称 茂木町有機物リサイクルセンター(美土里館)
  ●建設場所 栃木県茂木町大字九石641−1
  ●敷地面積 14,070u
  ●建築物・工作装置面積
  建築物   管理事務所   1棟   130u
  作業庫   1棟   990u
  副資材保管庫   1棟   324u
  脱臭棟   1棟   393u
  原料投入棟   1棟   195u
  工作物   液状化棟   1棟   167u
  二次発酵棟   1棟   1,279u
  乾燥調整棟   1棟   2,310u
  装 置   円形発酵棟   1棟   425u

施設概要
  ●処理能力:
  4,441t/年(18t/日)  稼動日数:315/年   滞留日数105日以上
  ●原 材 料:
牛ふん尿 10.00t/日 3,228t/年
生 ご み 1.06t/日 512t/年
もみがら 0.79t/日 250t/年
枯  葉 0.79t/日 250t/年
お が こ 0.63t/日 200t/年
  ●製  品:
たい肥 10.00t/日 3,228t/年
液 肥 2.84t/日 894t/年

装置概要
  ●原料投入装置 1式   原料投入ホッパー・
  副資材投入ホッパー・
  混合機
  ●円形発酵装置  1式   スクリュー式攪拌機・
  臭気捕集テント
  ●二次発酵攪拌機  2式   スクリュー式攪拌機
  ●乾燥攪拌機  4式   ロータリー式攪拌機
  ●自動袋詰装置  1式   15K詰及びフレコンパック詰対応
  ●おが粉製造機  1式   間伐材粉砕機
  ●液肥化装置  1式   固液分離装置付、曝気槽
  ●脱臭装置  1式   微生物脱臭
  ●自動計量装置  1式   トラックスケール