この度の人事異動により畜産課長を拝命いたしました。新年度にあたり改めて、新たな気持ちで、本県畜産振興のため、全力を尽くして頑張ってまいりますのでよろしくお願いいたします。
 畜産をめぐる最近の情勢は、本年1月から3月にかけて、国内では79年ぶりとなる高病原性鳥インフルエンザの発生が確認され、感染拡大への懸念と、人への感染も否定できないことから、畜産関係者のみならず国民をも巻き込み、大きな社会問題となりました。
 その後の発生につきましては、発生県・関係機関の懸命な防疫措置により、感染の拡大はくい止められ沈静化の状況にありますが、感染経路につきましては、いまだに解明されていないことから、生産者、消費者及び防疫に係る関係者の不安は払拭されていない状況にあります。
 また、国際情勢を見てみますと、昨年末のアメリカにおけるBSEの発生確認に端を発した牛肉の輸入の一時停止措置の発動、それに続く東南アジアでの鳥インフルエンザ発生によるタイ・中国等からの鶏肉の輸入停止措置、さらにはメキシコとのFTA協議が合意したことから、同国からの豚肉輸入には、関税の半減枠が設定されるなど畜産を取り巻く環境がめまぐるしく変化してきております。
 一方、県内の農業情勢につきましては、担い手の高齢化、耕地利用率の減少などに加え、消費者ニーズや流通形態の多様化など社会構造が変化していることから、茨城農業のさらなる発展を図るため「消費者のベストパートナーとなる新たな茨城農業の確立」を目指し、抜本的な茨城農業改革に取り組んでいるところでごさいます。
 畜産におきましても、この改革の一環として銘柄畜産物のブランド力の更なる向上を目指し、本年度新たに常陸牛を重点とした、生産から販売までを見据えた対策の実施に取り組んでまいるところでございます。
 本年度取り組みます畜産施策につきましては、@生産基盤の増強A畜産経営の体質強化B安全な畜産物の生産C畜産環境対策の充実D試験研究の推進と指導体制の充実を大きな柱とし、以下の対策を推進してまいります。
 生産基盤の増強対策につきましては、家畜改良による生産能力の向上に努めるとともに、水田を活用した飼料作物の増産を促進し、飼料自給率の向上のための取り組みを進めてまいります。
 また、事業実施2年目となります茨城南部地区の畜産基盤再編整備につきましても基本施設の整備等を推進してまいります。
 畜産経営の体質強化対策につきましては、BSE対応資金の利子助成を引き続き実施していくとともに、肉豚の価格補償事業等を通じ経営の安定を図ってまいります。
 さらに、脆弱化が進む県内和牛子牛の生産拡大対策を実施するとともに、常陸牛を始めとした県銘柄畜産物の販売対策の強化に取り組んでまいります。
 安全な畜産物の生産対策につきましては、消費者の求める安全な畜産物を供給する体制を整備するため、15年度に策定した「畜産物生産ガイドライン」の畜産農家への普及・定着に努めてまいります。
 また、BSE対策特別措置法により、義務づけられた24カ月齢以上の死亡牛の検査につきましても引き続き実施してまいります。
 畜産環境対策につきましては、家畜排せつ物法の整備期限を本年10月末日に迎えることから未整備農家に対する施設整備促進活動(ローラー作戦)を引き続き重点に実施し、家畜排せつ物が適正に処理保管されるよう指導してまいります。
 さらに、なお一層のたい肥の流通を促進させるため、新たに地域土づくり応援団との連携のもと、たい肥の品質分析を通じた適正な利用の促進を図ってまいります。
 試験研究の推進と畜産指導体制の充実につきましては、高付加価値畜産物の生産技術や省力化技術、並びに先端技術の活用や家畜ふんのたい肥化技術などを重点に研究を進めるとともに、畜産経営技術の高度化に対応した指導体制の確立と畜産経営の安定のため、引き続き畜産コンサルタント員による指導等を支援をしてまいります。
 最後に、畜産を取り巻く情勢は大きく変化しており、これらに対する迅速な対応が従来にも増して求められております。今後とも畜産生産者はもとより関係市町村、団体が一体となった取り組みが重要となっております。
 本年度も引き続き皆様のご協力を重ねてお願い申し上げます。


 1 生産基盤の増強              
(単位:千円)
事業名 予算額 事業内容
家畜改良増殖対策

 乳用牛群総合改良推進事業


 農協有家畜導入事業


 広域後代検定推進事業


 優良種豚育種効率向上推進事業


 畜産共進会事業


飼料対策

 飼料特別対策事業



 耕種作物等利用自給飼料増産事業



 畜産副産物飼料化施設整備事業



 畜産基盤再編総合整備事業


 7,200


 2,760


 11,206


 7,981


 1,707




 6,964



 16,000



 301,190



 50,199


 乳用牛の能力を検定し、群としての能力の向上を図るとともに、飼養管理の改善に資する。

 肉用牛の導入を行うための基金造成に対して補助することにより、肉用牛資源の拡大を図る。

 優良な肉用繁殖雌牛群の整備と計画的な交配により、産肉性の高い種雄牛の造成を図る。

 民間の種豚生産者を組織化して、種豚改良群を確保することにより、能力の高い種豚の生産を図る。

 畜産共進会開催に対して補助することにより、家畜の改良増殖を推進する。



 飼料作物等の生産性の向上、利用の促進を図るため、推進活動を通じて、飼料自給率向上への高揚を図る。

 稲発酵粗飼料の増産や稲わら等を活用するための収穫・調整機械の導入に対し補助し、自給飼料の増産を図る。

 食鶏処理場から排出される残さを肉骨粉に加工し、飼料原料として活用するための施設整備に対して補助し、資源のリサイクルを推進する。

 草地の造成飼料生産基盤の強化を図るとともに、農業用施設の整備により、中核的畜産農家を育成する。

 2 畜産経営の体質強化
事業名 予算額 事業内容
金融対策

 牛海綿状脳症対応経営維持資金
 利子補給金



 畜産振興資金貸付金



経営対策


 肉畜鶏卵生産出荷調整事業


 畜産物価格補償事業



 系統豚普及・銘柄豚生産体制強
 化事業


 いばらき畜産物ブランドアップ
 対策事業



 いばらきの地鶏銘柄確立事業


 常陸牛銘柄確立事業


 5,773




 841,000






 3,298


 12,852



 2,900



 19,509




 350


 2,000


 BSEの発生により経済的に影響を受けた大家畜経営者に対し、融資機関から大家畜経営維持資金、BSE対応畜産経営安定資金に対する利子補給をすることにより、経営の安定化を図る。

 畜産関係団体に事業運営の円滑化のための事業資金を融資することにより、畜産農家の経営の安定と畜産物の流通合理化を図る。




 肉豚、鶏卵、鶏肉の生産出荷動向予測調査の実施により、安定的な生産と経営の安定を図る。

 豚の枝肉価格は年間の価格変動が大きく、不安定である。このため、価格低落時に価格補償を行うことにより、経営の安定化を図る。

 種豚としての「系統豚」の活用と銘柄肉豚「ローズポーク」の生産振興を一体的に推進し、銘柄豚生産基盤の強化を図る。

 県内繁殖和牛の頭数を拡大し、優良子牛を安定的に供給できる体制を整備するとともに、効果的な消費拡大対策の実施により、常陸牛販売店舗の拡大と銘柄畜産物のブランド力の向上を図る。

 「いばらき地鶏」のPR活動に補助することにより、地鶏の普及と銘柄の確立を図る。

 常陸牛の品質向上と消費者への消費流通促進対策の実施により、銘柄の確立を図る。

 3 安全な畜産物の生産
事業名 予算額 事業内容
家畜衛生対策

 監視・危機管理体制整備対策事業



 慢性疾病等低減対策事業



 畜産物安全確保対策事業


 家畜衛生特別対策事業


畜産物生産安全性確保対策


 畜産物生産ガイドライン普及・定着事業



 牛海綿状脳症検査推進事業


 死亡牛牛海綿状脳症検査補助委
 託事業

 家畜伝染病予防事業


 自衛防疫強化総合対策事業


 地域自衛防疫推進事業


 8,910



 8,792



 6,191


 9,253





 1,104



 69,837


 20,625


 39,634


 7,055


 19,580


 家畜伝染病疾病の発生予防、まん延防止措置を迅速かつ的確に実施するため、事前対応型防疫体制の整備を図る。

 生産現場における家畜衛生上の課題について、防疫マニュアルの作成により、家畜の損耗防止と生産性の向上を図る

 生産段階からの安全確保対策の強化により、安全は畜産物の生産体制の整備充実を図る。

 家畜保健衛生所の疾病診断技術や機器の活用による迅速な検査の実施により、畜産物の安全な供給体制を確立する。



 安全・安心な畜産物を生産供給する体制を確立するため、県において策定した「畜産物生産ガイドライン」の普及・定着を図る。

 BSEの原因究明のため、24カ月以上の死亡牛全頭を検査し、その発生およびまん延の防止を図る。

 死亡牛検査の円滑な実施のため、検体採材補助死亡牛管理、検査補助業務を委託する。

 家畜伝染病の発生予防及びまん延防止のための検査等を実施する。

各種家畜伝染病の発生を防止するために実施する自衛防疫活動に対し補助し、自衛防疫組織の強化を図る

 口蹄疫等悪性伝染病の発生を想定した、市町村単位の地域防疫体制を整備する

 4 畜産環境対策の充実
事業名 予算額 事業内容
畜産環境対策


 資源循環型畜産確立指導事業


 地域畜産環境対策事業



 たい肥品質診断推進事業


 地域資源循環畜産環境対策事業



 畜産資源リサイクル促進事業


 液状コンポスト活用地域育成モデル事業



 3,628


 449,742



 1,152


 23,000



 1,000


 847



 畜産農家に対する巡回指導や実態調査を実施することにより畜産経営に起因する環境問題を防止する。

 畜産農家の組織化や耕種農家との連携による家畜排せつ物処理施設等の整備に対し補助することにより、地域環境の保全を図る。

 地域土づくり応援団との連携のもと、たい肥の品質分析等を実施し、円滑な流通を促進する。

 畜産農家の組織化や耕種農家との連携による家畜排せつ物処理施設等の整備に対し補助することにより、地域環境の保全を図る。

 「茨城県たい肥利用促進協議会」が行う活動に対し補助し、良質たい肥の生産やたい肥利用の促進を図る。

 液状コンポストを活用するモデル地域を育成することにより、環境保全型農業を推進する。

 5 畜産指導体制の充実
事業名 予算額 事業内容
 畜産経営指導事業



 畜産経営指導体制円滑化推進事業



 畜産経営改善技術指導事業



 畜産協会組織強化事業
 8,082



 1,426



 15,723



 8,984
 畜産経営指導体制を整備し、畜産コンサルタント団による経営指導や研究会・研修会の開催を通じ、畜産経営の高度化を推進する。

 畜産に関連した情報の収集、収集した情報の分析、並びに畜産農家への提供により、時代に即応できる畜産経営の確立を図る。

 畜産農家の総合的な経営指導を行う、畜産コンサルタント員を設置し、指導を通じ、畜産経営の高度化を図る。

 畜産情勢の変化に対応した経営指導ができる体制を整備するため、(社)茨城県畜産協会の体制を強化する。