平成15年8月26日に岩間町にある茨城県農業総合センター研修室において茨城県たい肥利用促進協議会(会長 茨城県畜産協会会長 廣木 f)が開催され、これに併せて、講師に茨城町(有)丸エビ倶楽部 代表取締役社長 海老沢衛氏を迎え講演をいただいた内容について概要を紹介します。

1.有限会社丸えび倶楽部の概要
1)成り立ち  昭和61年代表者の海老沢氏を中心にして「生産者と消費者の健康を守る」ことを目的に有機農法研究会が発足、平成7年任意組合を設立、平成10年有限会社とした。
2)方針 微生物、微量要素、水のバランスがとれた土づくりをモットーに、食べ物の安全性を高め、食べて美味しい農産物の生産、施肥量、農薬使用量を削減した生産者自らが環境への加害者にならないような農業に取り組んでいる。
 どの様な生産を心がけているのかは、作物の生理の研究を行い土づくりに力を置いている。化学肥料と有機物(化学性)、有機物と堆肥(物理性)、腐敗と発酵(生物性)などについて研究を進めより良い作物生産に努めている。
 安全であることをどの様にして作り出すのかについて、次のことに心がけている。
@環境(地域の取り組み)
A自らの生活(生産活動)の中で環境への加害者にならない
B一次産業が必要なことの働きかけ
 自給率・フードマイレージ・生産するための淡水のあり方
C次の後継者に渡していくために如何するか

3)組織体制
 会員は正会員と準会員からなり、現在会員数は61名である。生産部会は地域ごとに8支部からなる。また、生産者が多い11の品目については専門部会が組織されている。
4)出荷体制
 生産者は茨城町を中心に2市12町村にまたがっているが、茨城町へ一元集荷して数量・品質のチェックを行っている。出荷先はほぼ全量、生活クラブ生協である。
5)販売品目
 米、野菜(トマト、メロン、ブロッコリー、ニンジン、サトイモ、ゴボウ、ダイコン、バレイショほか36品目)果実(梨、栗)、キノコ類である。
2.海老沢衛氏の経営
1)労力 2人(本人、妻)
2)作物
水稲 340a 秋冬ニンジン 200a
カンショ 80a ジャガイモ 60a
3.海老沢衛氏の発言断片集
 私は堆肥を利用する耕種農家である、この様な堆肥があれば良いという観点から話します。
 以前は見栄えの良い作物を作る事に力を置いた農業を行っていた、この結果、自分自身の体の不調や作物に連作障害が現れるようになった。
 体の不調や連作障害が出るような農業を続けては消費者にも、生産者にも良くないと考え有機農業に取り組むことになった。
 大量生産から多品目、少量生産に切りかえ生活クラブを中心に販売を進めてきた。
 平成4年から農地の履歴を作り、作付け状況や堆肥、化学肥料等の使用状況を記録し生産物との関係を検討してきた。(各生産農家全員)
 土造りの良く出来ている農地では、美味しい生産物生産につながり、安全・安心な作物ができる。
 第三者が私達の作物をどう評価するかが重要である。
 畜産農家が生産する堆肥は、原料としての堆肥に過ぎない。自分の使用目的にあわせ再堆肥化を行う必要がある。畜産農家の堆肥には副資材としてオガクズを使用したものが多い。作物の生育環境に良い土を作るには、土壌中のバクテリアに良い環境を作ることが重要であり、地中のバクテリアの多様化をすることであります。
 バクテリア自体のC/N比は5〜6である。オガクズのC/N比は340と大きく、発酵によりC/N比を下げないと肥料としての効果がない。逆に作物のNが取られてしまい生育障害がでる。
 モミガラ、イナワラのC/N比は60〜70であり、バクテリアのC/N比に近いと言えるが、いずれにしろ自分の作目に適した堆肥を作るために米糠等を添加して再堆肥化を行う必要がある。畜産農家の堆肥もC/N比を25まで下げてもらいたい。
 堆肥を使うことにより土温が上がり、安全で良い作物ができる。以前、人参の食害が発生した、C/N比を低くした堆肥を使用することにより、カブト虫の発生が少なくなり食害を防ぐことができた。堆肥発酵時に放線菌、糸状菌の活動を活発にした堆肥は土壌線虫を押さえる効果が高い。
 化学肥料を入れると病害虫の生活環境ができてくる、病害虫の大発生につながる恐れがある。
 化学合成された農薬、肥料を農地に入れないようにしている。化学肥料を入れずに済むなら入れない、入ってしまった物は取り除くことが出来ないから。日本の食糧自給率は40%であり輸入が60%である現況において、これらから出る堆肥を40%の土地で消化するのであるから問題が出るのは当たり前である。
 堆肥化に当たってはバクテリアが増殖しやすい条件を作るために米ぬかを加えている、モミガラはC/N比が高いがキノコの菌が分解を早くする。
 C/N比の高い堆肥化原料は発酵時に高温が出るので雑草の種子や害虫の卵が死滅するので安全な堆肥ができる。また、高温発酵から温度が下がってくると糸状菌、放線菌が多く出てくる。
 化学合成された物質が入っていると発酵速度が遅くなる、抗生物質が最も悪い。
参考 C/N比(炭素率)
 C/N比とは窒素(N)含量に対する炭素(C)含量比のことで、C/N比が高い堆肥(おおむね25以上)が土壌中に与えられると、土壌微生物はその分解に必要とする窒素を有機物以外の土壌中から吸収してしまうため、作物は窒素不足の状態となり一時的に窒素飢餓が起こる場合がある。C/N比が低い堆肥(おおむね10以下)では、施用当初から分解されるに従つて無機態窒素が急激に増え、ガスが発生する場合がある。C/N比が中庸(おおむね10〜25)な堆肥は施用当初から窒素が徐々に効いてくる。