1.地域および経営の概要
 (1) 地域の概要
 那珂町は、東京から北東へ約100km余り、茨城県の中央よりやや北よりに位置し、東側は原子力の東海村、工業都市の日立市・ひたちなか市に、西側は瓜連町等に、南側は県都水戸市に、北側は常陸太田市にそれぞれ接しています。
 北に遠く阿武隈山系を望み、町の北部を久慈川が西から東へ、西側を那珂川が北西から南東へそれぞれ流れています。



 地形は、久慈川と那珂川の沿岸に拓けた水田地帯とこの両一級河川にはさまれほとんど平坦な那珂台地からなっています。
 常磐道那珂インターは、町のほぼ中心に位置し、奥久慈地方などの県北山間地域とひたちなか市や東海村の県北臨海地域へのアクセスポイントとしての機能を果たしています。
 一般国道は、国道6号、349号、118号が町をほぼ南北に縦断しています。東京までの所要時間は、常磐自動車道を利用した場合、約1時間30分、JR線を利用した場合約2時間となります。
 気候は比較的温暖で、地震や台風などの自然災害が少なく、大変暮らしやすい町であります。
 町の人口は46,486人(平成14年10月1日現在)、地域農業の動向は、総農家数3,221戸、自給的農家737戸、専業農家553戸、兼業農家1,931戸(内第1種兼業65戸、策2種兼業1,866戸)、農家人口12,664人、男6,184人、女6,480人となっています。
 農業生産は、野菜、水稲、いも類が主体にあります。農業粗生産額は、51億4,000万円でうち耕種部門47億4,000万円、畜産部門1億8,000万円となり、部門別割合では、酪農55.6%、養豚22.2%、肉用牛22.2%の構成になっています。
 (2) 経営の推移と概要
@経営の推移
年 次 基幹作物構成 経営形態 経営内容及び特記事項
昭和35年 水稲
経営の始まりは、父が中ヨークシャー1頭
飼養し、その後随時増頭し一貫経営とした。
昭和55年 養豚+水稲 一貫経営 高校卒業後就農し、父と一緒に一貫経営を
始めた。種豚づくりに興味もあったことか
ら同時に繁殖雌豚デュロック種2頭を導入
し飼育を始めた。
就農することにより給料制となった。
昭和60年 養豚+水稲 繁殖経営 繁殖経営(ブリーダー)に憧れ徐々に優良種
豚を導入したり自家産で確保するなどし経
営を転換した。
昭和62年 養豚+水稲 繁殖経営 結婚と同時に養豚の経営管理を父から任さ
れた。
種豚改良を進めてきた結果、茨城県種豚共
進会において農林大臣賞受賞した。
平成2年 養豚+水稲 繁殖経営 順調に経営を進めていたが、5月に思いも
よらぬオーエスキー病の発生をみた。
平成3年 養豚+水稲 繁殖経営 発生後、衛生対策等進め努力が実り7月に
オーエスキー病が陰性となり病気から開放
された。
平成5年 養豚+水稲 繁殖経営 種豚のレベルアップのためデュロック雌2
頭をアメリカより輸入した。
平成6年 養豚+水稲 繁殖経営 自分でアメリカへ行き自分で選畜したデュ
ロック雌1頭を購入した。
(2年続けて種豚を購入)
平成8年 養豚+水稲 繁殖経営 病気から開放されてから、基盤となる優良
種豚の確保、育成に努力することにより経
営内容・種豚レベルが発生前の状態に戻っ
た。
平成12年 養豚+水稲 繁殖経営 種豚の血液更新のため精液導入による人工
授精により本格的に種豚改良に取り組むよ
うになった。
平成14年 養豚+水稲 繁殖経営 現在に至たる。
種豚改良に邁進中。
A経営の概要
家畜の飼養状況
 種雌豚 40頭(L 20頭、D 15頭、W 5頭)
 種雄豚  5頭(L 1頭、D 3頭、W 1頭)
畜舎・施設および機器異・車輌
 分娩舎1棟、雄豚舎1棟、雌豚舎1棟、販売候補豚舎1棟、ストール舎1棟、子豚舎2棟、肥育豚舎3棟、倉庫1棟
 動力噴霧器、トラツク、ホイルローダ等

2.経営の特色
 (1) 純粋種豚の生産
 就農することにより繁殖経営(種豚ブリーダー)に魅力を感じ一貫経営から徐々に経営を転換した。
 優良種豚の県内・県外よりの導入や自家産豚による改良促進を行うことにより茨城県種豚共進会へ種豚等を出品した。
 (2) 販売先の確保
 生産者のニーズにあった種豚を生産し販売している。種豚の販売先として、家畜市場での販売、生産者への口込みでの販売を行っている。
 (3) 人工授精の活用(優良種雄豚の精液導入)
 種豚の血液更新のために優良種雄豚の精液を利用し、人工授精を実施し種豚の血液更新を図るとともに種豚の改良を進めた。
 (4) 肥育豚の販売
 種豚として販売できなかった種豚については、少しでも付加価値を追求するために肥育豚にあった種豚の選畜に気をつけた。
 (5) 衛生対策の実施
 種豚生産をする上で疾病の発生は、経営を左右する重大な問題となりかねないことから衛生対策については、人一倍神経を使い衛生管理を実施している。
3.今後の課題と目標
 当地域においても都市化の進展による飼養環境の悪化や畜産環境問題の変化、農業従事者の高齢化、後継者不足による廃業などにより畜産農家戸数が減少しています。
 今後は、現在の成績に満足せずより高い目標を持ち生産者や消費者が好む美味しい豚肉を生産できる種豚を造っていくことを目標に考えています。
 (1) 今後の課題
@種豚改良による優良種豚の生産
 現在、精液導入により人工授精を実施し、種豚改良を実施しているが使用している精液の能力を把握することが難しいが情報収集を進め能力の高い精液を確保していく。
A種豚及び候補豚としての販売促進
 1頭でも多く種豚・候補豚として販売できる、優良種豚の確保及び飼養管理に心掛ける。
 (2) 経営の目標
@ゆとりのある養豚経営
 現状の飼養規模を維持し収益性の高い経営をし、家族と余暇を楽しむ余裕のある経営をしていきたい。(酪農業と同じようなヘルパー制度があると良いと考える)
Aバランスのとれた種豚の生産
 市場性のある能力の高い種豚の生産をしていきたい。
B肥育豚の販売
 肥育豚の販売収入も経営の中でウェイトが高いことから、収益を確保する上で飼養管理(出荷時期、体重)に注意し、現在の成績より向上させていきたい。(現在の格付は上と中で8、9割を占めている)
 肉豚を見ながら種豚を改良している。