T.肥育事業の経緯について
 1.肥育のスタート
 山方町は県北部に位置し林野率70%を占める農山村で、1戸あたりの耕地面積も少なく耕種部門での大型経営の成立の可能性は低い状況です。
 従って、耕種部門は稲作+コンニャク等特産物との複合経営が多く定着しております。
 そのような中で中山間地農業に活路が見い出せないものだろうかと、昭和40年初期にはあまり肥育されていない乳用雄子牛の肥育に着手したのが本事業の始まりです。
 開始当初はヌレ子(哺乳中の子牛)からのスタートでしたので特に下痢などによる疾病や事故にはかなり悩まされました。
 また、長い36年に渡る道のりの中には2度にわたるオイルショックによる畜産危機に直面するなど多くの難問と直面して参りました。

 2.「ピュア一山方牛」から「山方牛」へ
 乳用種の販売頭数の推移は昭和43年の9頭に始まり10年後には440頭、更に昭和61年には部会員数20名、年間出荷頭数1,300頭にまで増頭が図られました。
 しかし、輸入自由化等の影響もあって、平成11年頃には乳用種肥育の将来性にも不安が感じられるようになってきたため、乳用種肥育を諦め平成12年からは交雑種肥育に切り替え、「ピュアー山方牛」から「山方牛」に転換が図られました。

U.組織的に取組んできた事業
 1.肉用牛集約生産基地育成事業
 昭和54年から3カ年計画で事業費3億7千百余万円で2カ所に5棟(650頭規模)を建設しました。施設の利用にあたっては共同利用賃貸方式(15年)を取入れ若い後継者の規模拡大志向を受け入れるとともに肉用牛産地化の促進を図りました。
 更に優良肥育素牛の安定供給及び肥育成績の向上を図るために乳用種哺育育成施設を農協直営で実施しております。

 2.家畜糞尿有効利用促進事業
 規模拡大を図る上でネックとなる家畜糞尿処理問題解決の組織的対策として昭和51年から52年に渡って家畜糞尿有効利用促進事業を導入して畜産では堆肥運搬車、ショベルローダーの整備、耕種部門では集落ごとに堆肥舎5棟を設置し地域内流通促進の共同利用体制の整備を図りました。
 3.長期平均払制度の開始
 経営の長期安定を図るため昭和51年4月より15名の部会員加入によって、農協独自の長期平均払いの実施、翌年、昭和52年4月に全国畜産経営安定基金協会が設立され制度化されたため、その制度に切り替え今日に至っております。
 4.肥育牛事故共済制度
 昭和52年2月には家畜の不慮の事故による経済的損失を軽減する畜産農家の手立てとして、肥育牛事故共済制度を肥育部会独自で制定しました。
(農協独自のこの制度は平成14年で農業共済に切り替えた)

 V.施設の運営状況について
 1.哺育センターの運営について
(1)導入牛
  ヌレ子(体重40〜50Kg程度)
  市場100%
  酪農家0%(以前は有り)
(2)哺育育成期間
  約6ケ月〜7ケ月哺育育成(体重250Kg程度)
(3)農家渡しの価格について
  北海道全農建値+運賃で設定
(4)年間出荷頭数
  14年度は283頭(不足分は北海道及び県内導入)
(5)事故率について
  4%(以前は10〜20%の時もあった)
 2.堆肥センターの運営について
(1)堆肥の搬入先、量等
  14年度 肥育農家1,166台(2,323t)
        酪農家  551台(1,102t)
(2)処理能力等について
  現況の処理で対応可能
(3)堆肥の販売等について
  2トン車  4トン車  袋詰
(4)販売先
  全農県本部を通じて県内のJAへ
  鉾田町、旭村、JA水戸、JAひたちなか、JAかしまなだ、JA茨城ひたち、他県内
(5)販売量(14年度)
  4トン車216台、2トン車506台、袋詰7,053袋
(6)評価等について
  現在では特に苦情もなく販売されている。(冬期は若干水分が多い)

W、部会活動状況
 1.肥育牛部会定例会の開催
  年12回・導入、出荷打合せ・その他内部取り決め
 2.枝肉共励会の実施
  JAで年1回東京芝浦市場で開催、・他各共進会に出品参加
 3.敷料(オガクズ)の共同購入及び搬送業務
  地元製材所との契約(農協が)、部会員が搬送する。
 4.乾草の共同購入の実施
  毎月コンテナで購入(自分達でおろす)
 5.先進地視察の実施
  年1回〜2回視察実施
 6.部会通常総会の開催
  年1回開催
 7.生協等からの視察受入及び説明会対応
  年4回〜5回の視察受け入れ、及び説明会(14年度はBSEで4〜5回)

X、最後に
 当農協、肥育牛部会の肉牛生産は36年の月日を刻んで参りましたが、その殆どが乳用牛肥育であります。そう言つた点から「山方牛」である交雑種牛の歴史はまだ始まったばかりであります。
 今になって思えば、むしろ乳用種から交雑種への切り替えが大きな問題もなく予想以上にスムーズに出来過ぎたと思っております。反面、山方牛での試練の時はこれからだと考えておりますので、今までご指導を賜りました全農県本部を初めとする関係機関の方々のより一層のご指導・ご支援の程をよろしくお願い申し上げます。