昨年は全共の年でした。茨城県からも若雌の部、繁殖牛群の部、父系肥育の部に出品しました。
 本県の改良も前回の全共から大いに進み、ある程度の成績は挙げられるものと、期待していましたが、結果は厳しいものがありました。他県の改良の速度が予想以上であったこと。また、全共への取り組みが、もう一つであったこと等が反省させられました。次回の全共では雪辱を期したいものです。
 さて、そんな中で本県基幹種雄牛の明光4号の産子は、群出品しました父系肥育の部で1等賞にランク付けされました。出品した3頭ともA−4に格付けされ、平均BMS Noは、5.7,平均枝肉重は、412k gと、出荷月齢が24ケ月齢未満という厳しい条件を考えれば十分とは行かないまでも、納得できる成績だったと言えましょう。群内のばらつきも少なく安定した成績でした。明光4号は、元々飼いやすく、枝重が取れ、屑がないことが特徴でした。その力を発揮してくれたものと評価しています。また、このことは本県の繁殖牛群の能力の斉一性が増している結果だと思います。育種価を利用した改良の効果が現れてきているものと思われます。しかし、まだまだ上にはたくさんいます。種雄牛の改良と雌牛群の改良は、歩を休めるわけには行きません。他県としのぎを削って実行していかなければ、置いてきぼりを食ってしまいます。
 そこで、今回本県の改良のシステムと次代を担う本研究所繋養の候補種雄牛について紹介いたします。

 本県の改良システム
 茨城県の改良の根幹をなしているのが、「茨城県肉用牛広域後代検定推進事業」です。この事業では、まず「優良な種雄牛」と「優良な雌牛群」を整備することとなっています。次いで、それらを利用して県全体の雌牛群の底上げを図っていこうとするものです。
 県全体で組織的に育種改良を進めていこうというのが事業の主眼です。ただし同時に、繁殖農家の経営面での向上も視野に入れたものとなっており、単に改良面だけを追ったものとはなっていません。システムの概要は、図1のとおりです。

 基幹種雄牛
 「優良な種雄牛」として本県では、毎年度、3月に行われる肉用牛育種改良推進協議会で、能力の高い優秀な種雄牛を次の年度の基幹種雄牛として選定しています。育種価とその育種価の正確度の高い牛と言うことが最大の条件です。基幹種雄牛は、後継牛を得るために、基礎雌牛に計画的に交配されます。これを計画交配と言っています。基幹種雄牛の選定に当たっては県有種雄牛だけでなく、県内種雄牛に欠けている部分を補うために広く県外の種雄牛も含めて検討されます。現在、明光4,美幸福,安福秀,福栄、平茂勝、平茂晴、東末広の7頭が指定されています。安福165の9、北国7の8は、精液の入手が出来なくなったことから除外されています。また、美津福も美幸福と同じ血統であることから同様の取り扱いとなっています。

 基礎雌牛
 「優良な雌牛群」として、概ね200頭の雌牛が基礎雌牛に指定されています。これも、毎年度前述の肉用牛育種改良推進協議会で検討をして更新をしています。基礎雌牛選定に当たっては、基礎雌牛の選定基準に乗っ取って行われます。発育が良いこと、体型が優れていること、産子の肥育成績が良好であること、あるいは育種価が高いこと等の要件を満たしていることが必要です。現在の基礎雌牛は、ほとんどが育種価が判明している牛になっています。育種価特に脂肪交雑の育種価が高い牛でなければ基礎雌牛には指定していません。ここでも、育種価が重要なファクターです。
 基礎雌牛は基幹種雄牛と計画交配されます。生まれた産子のうち特に優れた育種価(期待育種価)を持っている雄子牛は、種雄牛候補としての1次試験である「直接検定」に掛けられます。生まれた雌子牛は、基礎雌牛や一般雌牛群の更新に回ったりします。一般雌牛群の能力のアップは、種雄牛からと基礎雌牛群から生産される雌子牛達によって図られます。


 直接検定
 直接検定に掛けられる子牛は、県内の雌牛群の中から選び出された基礎雌牛200頭の中でも特に優れた育種価を持った雌牛に、県の基幹種雄牛を計画交配して生産されたものです。112日間、本牛の増体能力や飼料の利用性、終了時の体型得点、育種価を加味して総合的に合否が判定されます。特に育種価の高いか低いかに大きなウェイトが置かれています。直接検定合格牛の遺伝的能力は、かなりの正確度を持って高いと言えます。

 後代検定
 直接検定に合格した牛は、種雄牛としての最後の関門である後代検定に掛けられます。本県では、平成11年から、それまで行っていた間接検定からフィールド方式後代検定に改めました。これにより時間は掛かりますが、日本格付協会の格付け結果を用いられることになり、間接検定の格付結果と日本格付協会の格付結果に差があることによる現場と乖離しているとの批判を受けることがなくなりました。より現実的な検定結果になったと言えます。
 フィールド方式後代検定は、現場後代検定と一般的には言われ、本県では産子18頭の成績から計算された育種価により合否が決められます。合格牛第1号は、安豊福号で、安福165の9の子です。現在、凍結精液を配布中です。

 県有種雄牛
 本研究所が、県酪連を通して凍結精液を配布している種雄牛は、10頭になります。それ等の系統は、兵庫県や他県からの導入牛、更にその牛を父牛に持つものや亀常、亀継の系統、そして現在主力となっているのですが、谷福6号の系統と、安福165の9の系統です。兵庫県や他県からの導入牛以外はいずれも県内の基礎雌牛に基幹種雄牛を交配して生産されたもので、推定育種価が高いものばかりです。

 待機牛
 供用されている種雄牛の他に、以下の牛たちが、これから本県の改良を担うべく待機しています。
 現在の凍結精液を配布している種雄牛の主力が、谷福6号の系統と、安福165の9の系統に偏ってしまっていることから、待機牛の系統は北国7の8や平茂勝、更に美幸福、美津福の子など多士済々のラインアップです。これ等の牛も、交配の選択肢を増やす意味から、後代検定が終わっていないことを承知の上で使うことを希望される方には、精液を配布しています。