畜産経営においては、家畜排せつ物の素掘り貯留や野積みの解消が急務となっているため、先進的な畜産経営等の家畜排せつ物処理技術の習得のための現地視察、研修が実施された。
 茨城県畜産協会が平成14年度畜産環境保全指導事業の一環として実施したもので、畜産関係団体や市町村等の畜産担当職員が参加した。

 生物系特定産業技術研究推進機構(さいたま市)
 畜舎換気用除じん細霧装置(仔豚180頭以上 施設費700万円)、脱臭装置(肥育豚1500頭 施設設置費300万円)、畜舎排水脱色装置(ランニングコスト 10m3 1日55円)、畜舎排水リン除去装置(肥育豚2000頭 施設設置費 1300万円 ランニングコスト 1m3当り40円)等について研修した。

 埼玉県農林総合研究センター(大里郡江南町)
 近隣畜産農家の排せつ物と残飯、古紙、剪定枝を混ぜ堆肥化し「そこぢから」の商品名で販売(10kg 240円)している堆肥化プラントを研修した。

 神田牧場(酪農経営 さいたま市内野本郷)
経産牛 36頭   育成牛 9頭
経営形態  100%購入飼料依存型
ふん尿処理方式  全自動運転型回分式活性汚泥法(神奈川方式  武蔵野建鋼株式会社)
 ふん尿→固液分離→尿→活性汚泥微生物分解→放流   糞→堆肥舎で堆肥化→販売
        (ランニングコスト 月3万円)

 全自動運転型回分式活性汚泥法の特徴
 シンプルな構造で機械や配管が少ない構造であるため建築費が低く抑えられる。
 機械が少ないため電気代が少なく低ランニングコストで行える。
 大きめの曝気槽に生息する大量の微生物が確実な浄化処理を行うため安定した浄化機能を発揮する。
 日常運転は全自動運転、機械は全て無注油脂・無塗装でコンクリート水槽であるため、簡単な維持管理、優れた耐久性のある構造となっている。

 天田ピックスアーム (養豚一貫経営 群馬県高崎市上滝町)  繁殖豚 105頭規模
 尿処理方式 スーパーコミスター膜分離活性汚泥法(ダイキ株式会社)   尿→固液分離(膜分離活性汚泥層)→放流   ランニングコスト 年108万円
 固形物処理方式 オーガニック発酵プラントロータリー式発酵装置(ワシオ株式会社) ランニングコスト 年36万円 製品は園芸農家に販売 1m3当り2500円、袋15〜18kg 300円

 スーパーコミスターの特徴
 処理方式は膜分離活性汚泥法で固液分離に膜ろ過を採用した活性汚泥処理方式である。
 中空糸膜(中が空の糸、ストロー状)による処理は汚泥中に浸漬した中空糸膜が、汚泥中より清澄な処理水をろ過により得る方式で膜の穴の大きさは、0.4μm(4/10,000mm)と非常に小さく、大腸菌などのバクテリアもカットするために、ろ過水の水質は常に安定している。
 通常の活性汚泥法での沈殿槽の煩雑な管理が必要なく、維持管理作業が容易である。
膜分離を採用することにより、他の活性汚泥処理方式に比べ高い汚泥濃度での運転が可能になり、設置スペースが他の方式と比べ小さくなる。