養豚関係の試験研究報告を一休みして他部門について、取り上げてみました。
 今年度の試験研究は、順調に進行しております。特に大ヨークシャーの系統造成は6世代の子豚を順調に生産しており、最終世代ですので、これらの成績については、次回に報告したいとおもいます。
 今回は、テレビ、新聞等のマスコミで時々取り上げられ、我々畜産関係者にも益々関係が出てくる、いや既に避けてとおれない所まで来ているOSTRICH(ダチョウ)について書いてみます。
 ダチョウと聞くと皆さんは、首が長く目が大きく、草原を走っている大きな鳥、動物園にいる物を想像すると思いますが、我が茨城県が日本で一番飼養羽数の多い県であることをご存知ですか。
 農林水産省の調査によると、現在茨城県内で飼養されているダチョウの数は、約1700羽ですが、この他にダチョウの仲間であるエミユーを入れると、2000羽以上になると思われます。
 さて、皆さんは、ダチョウは地球上で現存している鳥類で最も大きい鳥であることはご存知だと思いますが、他の鳥類と非常に違っていることがあり、鳥とは思えない鳥です。
 現在飼養されているダチョウは、野生のものでなく、家畜として交配作出された物であります。
 ここでダチョウの七不思議とも言える幾つかを紹介します。
 ダチョウは卵生であることは疑う余地がありませんが、孵化するときには、中央導管なる臍の緒で外気と連絡されております。
 走鳥類と言われるようにこの鳥は空を飛ぶことができません。しかし、他の鳥類と同様に気嚢を持ち、大腿骨まで含気骨です。
 当然他の鳥と同様に羽毛を持っておりますが、他の鳥と大きく違うのは、ふつうの鳥は、羽軸を中心に左右不対象でありますが、ダチョウの羽は、左右が対称であり、静電気を帯びません。このためダチョウの羽毛は、コンピューター、高級乗用車の掃除用刷刷毛として利用されています。

 普通鳥類の食べ物は穀類が普通ですが、ダチョウは、牛などと同様に、完全な草食動物であります。そのために、牛と同様に食滞を起こします。特に孵化直後から3日月齢位までの死亡する鳥の30%以上がこの食滞で命をおとします。この他に、解剖学的に非常に違うことが多数あります。
 烏口骨、膝蓋骨がない。足の指が2本(エミユーは3本)であります。
 骨格筋の胸筋は無く、心臓は牛と同じで2心室2心房(鶏は1室1房)であります。
 その他のダチョウの特徴は別表に記しましたので参考にしてください。(表1,2,3)





現在の日本でどれ位の飼養羽数がいるか?
 農林水産省生産局畜産部畜産技術課が13年7月1日現在、全国の都道府県を通じて調査した結果を集計発表したのによると42都道府県、323件で9,327羽である。飼養羽数の推移では平成8年566羽であり、なんと現在は20倍弱になっていると推定される。(表4,5 図1)



 なぜ、このように急激な飼養羽数の増加がもたらされた理由は、いろいろ考えられるが、そのいくつかを挙げてみると
1:イギリスにおける肉牛の代用での人気
2:生産性が高い(豚と同じくらいの肉量)
3:草食であるので飼養が容易である
4:消化率が非常に高い、尿が出ない、臭いがない等、糞尿処理で悩むことがない
5:鳴かない
6:ヘルシーな肉である
等々が挙げられているが日本においては、更に飼養者が増える事が考えられる。(表6)
  ここで、私が一番心配なことは、ダチョウが第4の家畜になろうとしている現在、これらダチョウに対する病気、特に伝染病対策とダチョウの病気がほとんど知られていないことであります。

ダチョウは鶏の病気はもとより、全ての家畜、いや、動物の病気に感染するという、報告があることです。鶏の最も恐ろしいニューキャスル病は、ダチョウにも感染しますが、不顕性感染する事があります。また、私は、好酸菌症(鳥結核)に感染したダチョウを知っています。
 このように、全ての面で不思議な鳥であるダチョウ、注意しながら、この鳥の全てを勉強し、家畜として認められる日が来ることを願い、本当に横道に入りましたが筆を置きます。