インフルエンザと聞くと冬場のヒトの感冒をイメージされる方が多いと思います。しかし,インフルエンザはヒトにおいてだけ流行するのではなく,鳥類から哺乳類までさまざまな動物に感染し,時にその動物に病原性の高いウイルスが流行し,それぞれの動物群に決定的なダメージを与えます。 とくに最近では,家禽ペストと呼ばれる高度病原性トリインフルエンザの発生が下表のように世界各地で確認され,発生国の家禽業界に甚大な被害を与えています。1997年には,香港において生体売買のトリからヒトへインフルエンザウイルスが感染し,死者も確認されたというショッキングなニュースが報じられました。 最近の発生状況 (2001年2002年12月現在) このようにインフルエンザは養鶏産業のみならずヒトの公衆衛生においても,とても重要視されている疾病で,周辺国での発生状況から高度病原性トリインフルエンザ(家禽ペスト)の日本侵入が危惧されています。今回その症状や対策について紹介します。 インフルエンザウイルスとは インフルエンザウイルスは,A,B,C型の血清型に分類され,ヒトや各種動物に感染するウイルスの大部分はA型に属します。このA型ウイルスの表面には,HAとNAという2種類の突起があります。とくに病原性に関与するのはHAで,HAのタイプは1〜15まであります。高い死亡率5と7に限られており,これは法法定伝染病に指定され,日本では78年前の千葉県での発生が最後です。ちなみにHA5と7以外のインフルエンザウイルスの場合は届出伝染病です。 |
インフルエンザウイルスと宿主 このウイルスは,鳥類の他に,ヒトを含む各種哺乳動物の体の中で増えることができる,広範囲の宿主を持つウイルスです。 インフルエンザウイルスの本来の宿主はヒトではなく,水かきをもった鳥(水鳥)です。この水鳥から豚,馬,ヒトへ感染し,同じ鳥類の海鳥や鶏などに感染します。その症状の程度は,先ほどのHAのタイプや感染する動物によりさまざまです。 鶏の症状 眼瞼の腫脹,鶏冠の出血と壊死,脚のチアノーゼ,沈うつ,食欲廃絶,緑色下痢便,神経症状を呈します。ウイルスの病原性によって症状や死亡率は異なり100%鶏群が死亡する湯合もあります。 現在取られている対応 我が国では,発生地域からの輸入禁止措置,輸入家禽由来の畜産物や輸入鳥類の検疫を強化し,海外からの侵入を防いでいます。また,全国の家畜保健衛生所では養鶏場の浸潤調査を行い,現在までトリインフルエンザの浸潤は確認されておりません。 対策 野鳥(渡り鳥)がウイルスを海外から運んでくることが考えられるため,農場への野鳥の侵入を防止し,日頃の衛生管理とともに鶏の観察を充分行って下さい。飼養されている鶏に上記のような症状が認められた場合は,ためらうことなく家畜保健衛生所あるいは獣医師までご連絡いただけますようお願いいたします。 |